社会がグローバル化する中、我が国の科学技術研究および産業競争力の強化を実現する「科学技術創造立国」の基盤を揺るがす深刻な問題として、子どもたちの「理科離れ」が叫ばれています。「理科離れ」は単に「個人的に理科が嫌い」という問題ではなく、理科を学ぶ過程で本来養われるはずの知的好奇心や論理的思考力などの低下を意味しています。その結果として、文理問わず高等教育を理解できない学生が増大し、大学教育の質の維持が著しく困難に陥っているというかたちで問題は顕在化しており、もはや「理科離れ」問題は、国民全体における知の問題、すなわち社会的リスクであると捉えられています。
これらの社会的背景に、社会の細分化・複雑化に伴い、個々は専門家に任せ、結果だけを利用するブラックボックス化が進んだことがあります。その結果、わたしたちは効率性と引き換えに、本来そこにあるはずの【結果に至るまでのプロセス】を実感する機会を失ってきました。しなしながら【結果に至るまでのプロセス】にこそ、我が国が科学技術創造立国として国際社会の中で存在感を示し、なおかつわたしたちが心豊かな社会を創造するために大切な営みが隠されているはずです。特定非営利活動法人natural science では、この【結果に至るまでのプロセス】の見えない危機こそが、個人・地域社会・国レベルでの問題の本質的な原因と捉え、そこから解決策を見出していきます。
そもそも科学と言うと、一般的に「客観的で既に完成された完璧な体系」といった結果のイメージが先行しがちです。しかし当然のことながら、それら科学をつくるのは人であり、試行錯誤のプロセスがあり、そこには人の思いがあります。それら一つひとつの思いは共鳴し合うことで大きくなり、私たち一人ひとりが困難に立ち向かい、心豊かな社会をつくる原動力となることは、たとえどんなに大きな環境の変化があっても変わらないはずです。特定非営利活動法人 natural science は、知的好奇心がもたらす心豊かな社会の創造にむけて、「科学」を切り口に【結果に至るまでのプロセス】を可視化・共有化する場として機能することを「科学で地域づくり」と位置づけ、『学都「仙台・宮城」サイエンス・デイ』と『natural science 科学講座』の両輪で活動します。