第10回体験型自然科学の教室「雪の教室」
「すべらない」かがく
寒い冬の日、地面がつるつるにこおって、
すべって転びそうになった経験はありませんか?
あの靴はすべりやすい、あの靴はすべりにくい、
と思った経験も、きっとあるんじゃないかな。
でも、そもそも「すべらない」ってなんだろう?
どうすれば、「すべらない」ようになるんだろう??
この実験では、一番自分が「すべらない」と思う、
靴底のようなパターンをつくって、
誰が一番「すべらない」かを競います。
実際の靴底を参考にしながら、一番自分が「すべらない」と思う形にゴムを切って、
木片に貼り付けていきます。もちろん、ゴムも木片も、みんな同じ大きさです。
「これが一番すべらない!」と思う形は、こちらが想像した以上に、みんなそれぞれちがいました。
丸、三角、四角、星、不思議な形...
誰が一番「すべらない」のかな?
どうすればそれを比べられるかな??
ぼくの形が一番「すべらない」よ!と言い争いをしても決着がつかないので、
「すべらない」具合を「誰が見てもそうだと思える形」にします。
今回は、少しずつ板の傾きを大きくしていき、どの瞬間まで「すべらない」かを測定しました。
傾きが大きれば大きいほど=高さが高ければ高いほど、「すべらない」ってことがわかるよね。
「高さ○センチ」と表現するから、たとえちょっとした差でも、
どちらが「すべらない」かを判定することもできます。だから公平に戦えるよね。
このように、「誰が見てもそうだ」と思える数字に変えていくことを、
科学の言葉で言うと、「定量化(ていりょうか)」って言うんだよ。
科学者が、自然とお話しするためのひとつの方法なんだ。
「絶対お母さんの形が、一番すべらないと思ったのに...!」とお母さん。
意外と子どもたちの方が、「すべらない」形をつくっていたかもしれないね。
見た目だけじゃ、誰が一番「すべらない」かを判断できないけど、
ちゃんと「定量化」をしているから、公平に比べられるよね。
慎重に、慎重に、板を傾けていく子どもたち。
「すべらない」ということを、みんな直感的に認識しているのかもしれません。
今回、一番「すべらない」パターンだったのが、上の写真の子。80cmの記録です。
意外とシンプルですが、よく見てみると、ゴムを2重に重ねていることがわかります。
なぜこのパターンが一番「すべらない」形だったのだろう?
その理由を知りたいから、natural scienceメンバーで「追実験」をして、
その謎にせまっているよ。詳しくは、こちら をご覧下さい。
「すべらない」形も、十人十色。
きっとこれまで体験した「すべらない」イメージが、それぞれの形になっているんだね。
「すべらない」パターンができたら、今度は応用問題だよ。
「すべってから途中でとまる」パターンを、みんなで考えました。
全然すべらなくてもダメだし、すべりすぎても谷に落ちちゃうからダメ。
「すべらない」をコントロールしてみよう!
早速、成功者が出ました!
どんなパターンをつくったの?
なるほど!
ゴムのサイズや場所を工夫したんだね。
いろいろと条件を変えて、何度も試している子がたくさんいました。
中には雪を付ける事で、「すべらない」をコントロールした子も。
遊びの中に、実は、科学の芽が隠れているのです。
成功者の皆さんです。子どもの発想は本当に自由ですね。
それぞれの「すべらない」を形にしたパターンの多様性に、驚きました。
自分の靴の裏を観察しはじめた子もいたけど、靴底を見て、新たな発見があったようです。
「すべらない」視点でいろいろなものを改めて見てみると、
これまで見えなかったものも見えてきます。そこに面白みがあるんですよね。
このように、どこかでいつかみんなが体感してる「すべらない」という感覚を、
みんなで共有できる形にしていく方法のひとつに、科学があります。
それらをさらに積み上げていくと、「わかること」と「わからないこと」の境目が、
少しずつはっきりとしていきます。
教科書に書かれている内容だって、そうやっていろんな人が、
少しずつ積み上げてきた結果なんだよね。
natural scienceでは、「追実験」と言って、その後も「すべらない科学」で
「わかったこと」と「わからないこと」の境目を、追求していっています。
詳しくは、memberのページ をご覧下さい。
今回みんなが実験に使ったゴムや靴底は、「弘進ゴム株式会社」さんという仙台市に本社をおく大手ゴムメーカーにご協力いただきました。「弘進ゴム」さんは、業務用ゴム長靴で国内トップシェアを誇るメーカーです。今回は雪中の実験と言うことで、雪の中で滑りにくい特殊配合のゴムシートに加工して頂くなど、細やかなご配慮を頂きました。快くご協力いただきました弘進ゴムさんには、この場を借りて感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
弘進ゴム株式会社 http://www.kohshin-grp.co.jp