かがくしゃトレッキングツアー
そもそも、科学は自然と人間の共同でつくっていくものです。しかし、今、専門分野の研究に従事する研究者にとっては、自然に出かけていく機会そのものが少ないと思われます。
自然の中に出かけていって、自然の現象を発見すること。「そもそも、なんでだろう?」と、現象の切り口を見つけることからはじめよう。
宮城県には四季折々の自然があります。季節という時間の軸も切り口に、季節の自然に出かけていきましょう。
それぞれの科学者の発見をお互いに議論することで、自分の発見・興味を、だれもがわかる言葉に変換していきます。
自然の中を散歩
春の陽気の中、natural scienceのかがくしゃ3人+博士課程の1年生と森林公園を散歩しました。公園といっても、小さな山に雑木林があったり、大きな池があるので、けっこう自然が豊富です。お昼ご飯も公園で食べて、ちょっとピクニック気分です。
散歩といっても、さすが、かがくしゃ! いろいろな視点で自然の不思議を発見しました。素朴な疑問がわいてきます。かがくしゃが、3人いてよかったなと思うのは、ひとりが、疑問をボソッと言うと、すぐ疑問のポイントや、実験系が議論になることです。公園での探索の後は、北目町のnatural scienceのオフィスで、議論奮闘です。専門分野が、生物、物理などいろいろな分野にわたるので、いろいろな視点からの切り口が見えます。
今回の議論をきっかけに考えた実験系をさっそく、次回の「かがくしゃトレッキングツアー」で試します。以下に書いてあるテーマや実験を読んで、参加したい研究者、大学院生、大学生がいましたら、ぜひ、いっしょに実験しましょう!
次回予告
日時 4月13日(日曜日)11:30~13:30
北目町にあるnatural science のオフィスで11:30に待ち合わせ、台ノ原森林公園に向かいます。途中で、パンやお弁当をかって、公園で食べます。
対象 研究者 大学院生 大学生
生き物の実験
春、おきだしてきた生き物たちを使っての実験を考えました。
テーマ「生き物の行動」
ねらい:生物は自分の体の感覚、体勢感覚をもっているが、この体勢感覚を外部からコントロールしたときにどのような行動を示すのだろうか。
春の池で捕獲できると思われるザリガニを例に実験を考えた。
実験の手順
1.バネばかりでザリガニが歩行するさいに出している力をはかる
2.ザリガニの足と地面との摩擦をかえるために、足にテーピングする
3.体勢感覚によって、ザリガニがどのような応答をるか、ザリガニが出す力をバネばかりではかる
体勢感覚が視覚情報にどのように頼っているかも疑問なので、視覚を遮って、行動を観察する実験も行う。
テーマ「生き物の自切り」
ねらい:ザリガニやトカゲは、敵にはさみや、尻尾を捕まれると、自ら切り落とす、自切りという行動をとる。ザリガニのはさみを引っ張り、自切りするときの力を測定する。この力はザリガニが、体ごと持って行かれる力に等しいだろうか? つまり、ザリガニは自分の体が持って行かれる力の大きさを知っていて、その力がかかる前にはさみの自切りを行うのであろうか?
実験の手順
1.バネばかりでザリガニの静止摩擦力をはかる
2.ザリガニのはさみにバネばかりを取り付け、自切りするときの力の大きさを測定する
一応、ザリガニをモデル生物として想定しているが、他の生き物、昆虫、爬虫類などでも同じように、「体勢感覚と行動」に焦点をあてたの実験ができる。
テーマ「むれの行動」
夏の自然の教室からのテーマである群れ、今回は春の池に大量にいると思われるオタマジャクシをモデル生物に実験する。
実験手順
1.水槽にオタマジャクシを一匹づついれて、観察する
2.オタマジャクシが群れるかどうかを観察する
3.小石を投げるなどして、敵からの逃避にどのような行動をするのか、観察する
テーマ「カエルの変色とオタマジャクシの変色」
ねらい:カエルは周りに環境の色にあわせて、色を変えることがしられている、では、オタマジャクシは、周りの色にあわせて、色を変えることができるのか。
実験手順
1.水槽の底に白い板をしく
2.オタマジャクシを水槽にいれる
3.オタマジャクシの色を観察する
4.実体顕微鏡で色素細胞の色素斑点の大きさを観察する
テーマ「コガネムシの色の不思議」
ねらい:コガネムシは、太陽の光を浴びて、七色にひかる、これは外骨格にタンパク質100ナノメートルぐらいの間隔で、タンパク質でできた凹凸が存在することで、光の波が干渉するからである。コガネムシの外骨格に溶液をかけ、体表面の屈折率を変えたら、何色になるだろうか。
実験手順
1.コガネムシの捕獲
2.甲にエタノールなどの溶液をかける
3.実体顕微鏡で観察する
地球環境の実験
テーマ「街における植物のはたらき」
ねらい:ヒトは自分が一瞬一瞬呼吸をしながら生きていること。今、立っているところが地球だということ。当たり前のことを以外にも忘れている。人が地球で生きるとは、大気で満たされた星の大地の上にいるということだ。
自然と社会の間に存在するものが公園である。街の中の緑のはたらきをフィールドワークで調べる。植物は太陽の光と二酸化炭素で、有機物をつくる。しかし、言われているように緑はどこまで、二酸化炭素を吸収しているのだろうか。公園の植物はどれだけの二酸化炭素を吸収しているのだろうか。
実験手順
1.公園と周辺の街のフィールドマップをつくる
2.各地点において、温度、湿度、風向き、二酸化炭素の濃度を測定する
3.フィールドマップに各測定データを書き込む
身近な環境で起こっていることを調べて、地球規模でなにがおこっているのか考える。
テーマ「木の形態学」
ねらい:公園の中の木々をもていると、木の形はさまざまだ。杉のようにまっすぐ上に幹が伸びて、水平方向に枝を伸ばす木のあれば、クヌギのようにななめ方向に伸びていく木もある。針葉樹、広葉樹で木の形態がちがう。
同じ種類の木でも、生えている場所によって、形が違う様子も見受けられた。
植物は太陽の光を受けて育つが、どのように幹と枝を伸ばして、太陽の光をより受けられるようにしているのだろうか。毎年、受けられる太陽の光はきまっているので、木の成長する体積は毎年きまっている、木はこの限られた体積をいかに上に積み重ねて、太陽の光を効率よくうけられるようにしているのだろうか。
さらに、近くに他の木の育つので、太陽の光を巡っての競争もある。 なんとか、木の形を定量化できないか。
実験手順
1.どのぐらいの高さで、何本の枝分かれがおこっているのかを測定する
2.木の形態をある粗視化レベルで、フラクタル次元をはかる
エネルギーをいかに獲得するか、木の絵がわかれの形態を観察することで、機能と形の不思議にせまる。
物理の実験
水面の波紋はどのようにしてできるのだろうか? 水平方向から風が吹いてきたとき、どのように水面が盛り上がって、波として伝搬するのであろうか。一度、波ができれば、重力によるエネルギーと水の圧力で波は伝搬するが、どのように波ができる瞬間には何がおこっているのだろうか。
風との相互作用で、どのように水面が盛り上がるのだろうか。風による波の発生原因をさぐる。
仮説:水平方向の風の速さが一様でないとする、その時、ベルヌーイの法則により、鉛直方向に圧力差が生じる。この圧力差で、水面が盛り上がるのではないか。
実験手順
1.風をうける船のようなものを水面に浮かべて、水面において、水平方向に吹く風の速さを測定する
2.水平方向の風の速度と鉛直方向への水面の盛り上がりに相関があるか、観察する。
ベルヌーイの法則:同一流線上に成り立つエネルギー保存則で、"流速が上がれば圧力が下がる"という法則。