【学会発表要綱】「先行制御」とリズムの自己生成の必要性
手動目標追従実験においてターゲットの運動に先行して制御する「先行制御」が発見され(F. Ishida and Y.Sawada ,Physical Review Letter, 93, 168105 (2004).)、「先行制御」は動的な誤差を最小にする制御であることが明らかにされたが、先行制御に必要な「予測メカニズム」については、不明な点が多い。「予測メカニズム」を明らかにするために、円運動を行うターゲットに対し手動目標追従実験を行った。
実験方法:円運動するターゲットをコンピュータスクリーン上に表示し、マウスを使用して追従実験を行った。図1のように被験者に円運動を行うターゲットにできるだけ正確に合わせるようにマウスを操作するように指示する。ターゲットの周波数を0.1Hz から0.7Hz まで、0.1Hz ごとに上げていき、それぞれの周波数で10回の測定データを平均した。
解析手法:ターゲットの位置とマウスの位置との位相差の分布をガウス分布によってフィッティングし、分布の中央値を検出した。またマウスの速度の時系列のフーリエスペクトルから、マウスの運動のリズム成分を検出した。
実験結果と考察:図2に見られるように、ターゲットの周波数が上がるにしたがって、マウスの位置が先行することが観測された。また、周波数0.2Hz 以上で、マウスの速度のリズム成分の生成が、マウス速度の時系列のフーリエスペクトルにおいて観測された。リズムの自己生成と先行制御の因果関係を明らかにするために、ガウス分布によるフィッティングから得られたターゲットとの位相差とリズム成分の強度をグラフにしたものが図3である。運動のリズムの自己生成とターゲットの運動よりも先行するという先行性との相関が見られといえる。このようにターゲットの速度がある一定以上速くなると、ターゲットに追従するよりも、ターゲットに先行することで運動に合わせようとする傾向がある。さらに、この先行性が発現される原因として、自らの運動におけるリズム成分の生成が必要であることが考えられる。
※平成20年日本物理学会秋季大会(盛岡)にて発表予定