スターリングエンジンにおける熱力学の考察
研究の背景
人類が誕生して以来、ヒトはより楽をして生活をするために言葉・火・石器を初めとして、道具をつくり続けてきた。
また、ヒトはより速く移動したいとも考え、初めは馬に乗り、馬車をつくり、やがて鉄道・自動車等をつくった。現代の主な移動手段としては鉄道・航空機・船舶・自動車が挙げられる。
我々の身の周りには道具が溢れており、もはやヒトは道具なしに生きることはできないと言っても過言ではない。
普段何気なく見、何の疑問も抱かずに使っている自動車であるが、その心臓部であるエンジンの仕組み・原理を理解している人は自分自身を含め意外と少ないのではないかと考えた。エンジンは科学的要素を抜きにして語ることは決してできない。
そもそもエンジンとはある力を異なる力に変換するものであり、機関(狭義でのエンジン)と熱機関(原動機)に分けることができる。ある入力を異なった力として出力するものが機関、熱エネルギーを運動エネルギー・動力に変換するものを熱機関という。
熱機関のうち、機関内部で燃料を燃焼させて熱を得、それを運動エネルギーへと変換するものが内燃機関、機関外部から内部にある気体を加熱し、気体の膨張・収縮によって運動エネルギーを得るものが外燃機関である。
どちらの熱機関も熱エネルギーによって機関内部の圧力と大気圧に差が生まれ、エンジンは圧力差によって動力を得る。
研究の目的
熱源の種類を選ばない、爆発を伴わない等の理由で外燃機関は熱効率がよく、静粛性に優れ、内燃機関と比べ構造が非常に簡単である。 外燃機関のうちスターリングエンジンにおいて、タイヤとピストンをつなぐコンロッドのピンをタイヤのどこに打つかでピストンの振幅は決まるが、【ピストンの振幅】、【シリンダー内の空気量】、【加熱量】という自ら設けた3つのパラメータと圧力の関係を知りたいと私は考えた。
研究の手法
試験管(高温側シリンダーとする)と注射器(低温側シリンダーとする)を使って実際に製作する。
【ピストンの振幅】はCD盤のどこにコンロッドのピンを打つかで変えるものとし、【シリンダー内の空気量】の単位は[ml]、【加熱量】は加熱後時間がどれくらい経ったかで調べるものとする。
動作原理
スターリングエンジンは2つのシリンダー間で温度差をつくり、各シリンダー内で空気を膨張・収縮させることでピストンの往復運動を得、それを回転運動に変えることで動く。
各シリンダー内のピストンの位相を90度ずらすことで空気のやりとりを行っている。
『加熱行程』
前行程において低温側シリンダーで冷却された空気が高温側シリンダーに送られ、加熱が始まる。
『膨張行程』
加熱されることにより空気が膨張し、膨張によって膨張ピストンは往復運動を得、コンロッドを介してタイヤは回転する。また、このとき各シリンダー 内の圧力は大気圧と比べ低下する。
『冷却行程』
前行程で得たタイヤの回転の慣性によって膨張ピストンは上死点(3の位置) から下がり始め、過熱された空気が低温側シリンダーへと送られる。
『収縮行程』
加熱された空気が低温側シリンダーに送られ、冷却されることで収縮し、収縮ピストンは往復運動を得て、タイヤは回転する。また、このとき各シリンダー内の圧力は大気圧と比べ上昇する。
再び『加熱行程』へといき、収縮行程で得たタイヤの回転の慣性によって収縮ピストンが2の位置から下死点へ動くことで冷却された空気が高温側シリンダーへと送られる。これら4行程を繰り返すことでスターリングエンジンは動き続ける。
研究の結果
高温側シリンダーと低温側シリンダーの太さが異なるため、各シリンダーの振幅分の空気量を等しくするには高温側シリンダーより細い低温側シリンダーのピストンの振幅を大きくしなくてはならない。
そこで高温側シリンダーのピストン(膨張ピストン)の振幅を30[mm]とすると、高温側シリンダー内の空気量は6.6[ml]となり、低温側シリンダーのピストン(収縮ピストン)の振幅は36.8[mm]と決まる。低温側シリンダー内の空気量はピストンの下がりきる位置(下死点)を変えることで4.6[ml]、5.6[ml]、6.6[ml]、7.6[ml]とした。
また、同じように膨張ピストンの振幅を40[mm]とすると、高温側シリンダー内の空気量は8.2[ml]となり、収縮ピストンの振幅は49[mm]と決まる。収縮ピストンの下死点を変えることで低温側シリンダー内の空気量を6.2[ml]、7.2[ml]、8.2[ml]、9.2[ml]とした。
いずれの条件にしても、加熱直後は『収縮行程』から『加熱行程』へ、
研究の考察
スターリングエンジンの原理として、『収縮行程』が終わる瞬間に圧力上昇のピーク、『膨張行程』が終わる瞬間に圧力低下のピークが来ると考えている。
いずれの条件にしても『膨張行程』が終わる前に必ず止まってしまうところから、『膨張行程』が終わる前に圧力低下のピークがきてしまうことでピストンの往復運動が止まり、適切な圧力差が生まれるような高温側と低温側の【シリンダー内の空気量】の設定ができていないと考えられる。
今後は残る3つの要素の組み合わせパターンを実行し、同時に定量化をすることで厳密に計算し、考察していかなくてはならない。