平成19年度経済産業省「理科実験教室プロジェクト」
【授業タイトル】電流のはたらき(6年生)
【協力企業】NECトーキン株式会社
【授業のねらいと概要】
項目 | 内容 |
---|---|
授業のねらい | 電磁石のしくみとはたらきを、磁石と比べながら理解する。さらに、電磁石の力を大きくするしくみを調べることで、電流のはたらきを理解する。 |
授業の概要 | 第6学年「電流のはたらき」の単元の導入部分として実施する。3、4年生で別々に学んだ「電気」「磁石」について磁界を見ることから捉え直し、それぞれが関係し合っている事を発見し、電磁石への興味を喚起する。さらに、電磁石をつくり、しくみやはたらきを理解する。そして、電磁石のはたらきを利用した製品に触れ、電磁石が身のまわりで工夫して利用されていることを知る。 |
【特別講師にお願いしたいポイント】
項目 | 内容 |
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特別講師にお願いしたいポイント (本授業内容の中で、企業が関わるからこそできる点、授業の際に必ず踏まえてもらいたい点) |
宮城県では、技術者と科学者の視点(工学的アプローチ・理学的アプローチ)から、「実験室から実社会へ」のつながりのある授業を提案しています。 <工学的アプローチ>
技術者が関わる意味... <理学的アプローチ>
科学者が関わる意味... |
【授業進行例】(45分×2)
時間 | 授業の内容・流れ ○児童の活動 ★企業講師が実施 ☆教員が実施 ▼主な児童の反応 | 学習のねらい | 必要な教具・教材 /☆留意点 |
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導入 (5分) |
【1時間目】
○講師の方と挨拶をする。 |
○3・4年生のときに学んだ、磁石・電気についてふり返る。 |
|
展開1 (15分) |
○実験"砂鉄で線を描こう!~PART1~"
<実験の手順> ○考察
★科学者 ○技術者の実験を観察する。
実験"砂鉄で線を描こう!~強力磁石~" |
○磁石のまわりの見えない力を、砂鉄の動きによって見えるようにする。 |
<使用するもの> |
展開2 (15分) |
○実験"砂鉄で線を描こう!~PART2~"
<実験の手順>
▼「あ、反発している。」 ○考察
★ 科学者 |
○磁石がくっついたり、はなれたりする現象を理解するために、極の違いによる磁力線の特徴を観察する。 |
<使用するもの> 棒磁石(3本)、砂鉄、紙 |
展開3(10分) |
○科学者・技術者の実験を観察する。
実験"砂鉄で線を描こう!~電磁石~"
☆「磁石のまわりの見えないところを砂鉄で見えるようにして、磁石の性質を勉強しました。次の時間は、電磁石を作って、電磁石のしくみについて勉強しましょう。これで1時間目の授業は終わりです。」 |
○電磁石でも磁力線ができることを確認し、磁石と同じはたらきをすることを知る。 |
<使用するもの> 電磁石、砂鉄、紙、電池 |
展開4 (20分) |
【2時間目】○実験"電磁石を作ろう!" 、技術者の技を見る。
<実験の手順>
▼「(巻くの)難しいなぁ。」 ○考察
★ 科学者 |
○ 磁石と同じはたらきをするものは、どのようなものでできているのかを、実際に作りながら理解する。 ○ 電磁石の作り方によって、はたらく力が異なることを確認する。 |
<使用するもの> 鉄くぎ(電磁石用:大きいもの)、鉄くぎ(小さいもの)エナメル線、乾電池、シリコンのチューブ、紙やすり |
展開5 (5分) |
○技術者のお話"製品の紹介"を聞き、電磁石が使われている製品に触れる。
★技術者
▼「分解した後、もとに戻せますか?」 |
○ 電磁石の磁石とは異なる特徴を、製品に使われている便利さから知る。 ○ 電磁石が身のまわりのもので、どのように利用されているのかを知る。 |
<使用するもの> 電磁石が使われている製品(例:パソコン、デジカメなど) |
展開6 (15分) |
○実験"強い電磁石を作ろう!"
<実験の手順>
▼「普通、電池が多いほうがいっぱいつくんだよ。だけど...」 ○考察
★ 科学者
|
○ 電磁石を強くする方法を知るために、電池やコイルの数を変えて、はたらく力を比べる。 ○ コイルの巻き方や電池の数によって、電磁石の強さが変わることを理解する。 |
<使用するもの> 鉄くぎ(電磁石用:大きいもの)、鉄くぎ(小さいもの)エナメル線、乾電池、シリコンのチューブ、紙やすり |
まとめ(5分) |
○技術者のお話"技術者の仕事"を聞く。
★技術者 ○講師の方と挨拶をする。▼「科学者の●●さん、技術者の○○さん、どうもありがとうございました。」 |
○ 今日の実験をふり返り、磁石・電磁石が実社会でどのように役立っているのかを知る。 |
プログラム実施の成果・感想(「電流のはたらき」の授業案)
1時間目の科学的アプローチにおいて、「そもそも、磁石ってなんだろう?」という問いかけから、子どもたちの興味を喚起することで、実験を行う必然性が生まれた。子どもたちが本来、もっている知的好奇心を授業の導入において、刺激することが大切であることを感じた。磁場という目にみえないものをいかに想像するか、見えるようにするための実験を立ち止まって考えるという科学者の姿勢が伝わったことが、知的好奇心をはぐくむ一歩になるという成果になった。
さらにサイエンスコーディネータとして、企業講師がつくる授業案を作成した。
現代における電気製品は、省エネ・小型化がすすみ、子どもが企業の製品を、そのままの形では理解できない。小学校の指導要領をふまえ、電磁石のはたらきという内容で、発展的な理科実験を行った。電磁石を自ら工夫してつくるという実験を行っているので、企業がつくった電気製品に関して、授業で学んだ「電流のはたらき」がどのように実際の製品で使われているのかを、子どもたちが実感できたことが成果といえる。科学的な視点からは、1時間目の授業で、磁場そのものを可視化しているので、2時間目の電流がつくる磁界についても、イメージが湧きやすかったと思う。
さらに企業がつくる製品に対する理解だけではなく、技術者が子どもたちと一緒に電磁石をつくる過程において、導線をいかにきれいに巻いていくかという、技術者が持つ「わざ」に関しても、子どもたちに伝わった。技術者が「ものづくり」に対して持つ緊張感が教室全体の雰囲気をつくった。
最後に技術者が、実際に製品開発に取り組んでいる現場での話をしたが、実社会で若手の技術者がどのような仕事をしているのか、社会における職業観の育成になったのではないか。
学校の先生に関しても、授業中に写真やメモをとる先生がいたり、実験器具の準備の仕方に関しても質問を受けたので、磁場を可視化する実験系や、電流のはたらきに関する発展的な実験系に対して、興味をもった先生が増えたことは、本教育プログラム実施の成果といえる。
今後の改善点(「電流のはたらき」の授業案)
単に電磁石をつくるだけでなく、電流がつくる磁場を探るという発展的な内容の理科実験であったが、磁場のイメージをつくる事は、子どもたちにとって、少し難しく感じるのではないかと思われた。言葉では伝わりにくい部分を画像やイラストなどの補助教材を用いることで、改善していきたい。電流のはたらきに関する考察とまとめに関しても、パワーポイントなどで、要点をイラストにしたものを用いれば、授業で学んだ課題に対する記憶の定着がより効果的に行われるはずだ。
円滑な授業の実施(「電流のはたらき」の授業案)
授業の導入部分において、本教育プログラムが理科の単元の流れの中で、どのような位置づけにあるのかを担任の先生に話していただいた。授業を円滑に進める上で、普段、子どもたちと接している先生が、授業の内容を大きく紹介し、科学者と技術者を紹介するということが、重要なポイントとして上げられる。
さらに、授業中の「理科実験」においても、子どもたちに実験の手順の進度の差が生まれたが、先生方が適宜、子どもたちをサポートするという形で、授業が円滑に進行した。そして、授業のまとめにおいては、担任の先生が、1時間目と2時間目のポイントを端的に説明し、今後の課題も説明したので、「電流のはたらき」の今後の授業へのつながりになっていったと考えられる。
平成19年度経済産業省「理科実験教室プロジェクト」実施報告
※詳細につきましては、こちらをご覧ください
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