第1回 natural science シンポジウム(2008.07.13)
蒲鉾を揚げた油で、バイオディーゼル燃料をつくろう!(塩釜市団地水産加工業協同組合)
21世紀を迎え、大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会から、地球環境を重視した循環型の社会への転換が求められている。そんな中、大量に発生する廃油を資源へと転換し、地域で消費する「エネルギーの地産地消」を実践するまちがある。水産のまち・塩釜市だ。
塩釜市では、水産練り製品の生産量日本一という地域特性を活かし、揚げかまぼこをつくる際に排出される大量の廃食用油を、バイオディーゼル燃料(BDF)事業によって資源へと転換する、東北最大規模のBDF製造プロジェクトが本格化している。資源循環型社会の構築と二酸化炭素削減をはかり、事業のPR効果によって基幹産業を活性化することがねらいだ。市内の水産加工組合のひとつである塩釜市団地水産加工業協同組合が主体となり、BDF製造プラントの建設ならびに廃食用油の回収からBDFの製造・販売までを実施。これまで県外のリサイクル業者が買い取っていた年間50万リットル以上の廃食用油がBDFへと転換された。
軽油の代替エネルギーとなるBDFは、プラントに併設された専用スタンドで供給。事前登録制だが、組合員の車や市の公用車の他、運輸会社のトラックや一般家庭用のディーゼル車にも利用されている。同組合部長の渡辺さんは、「水産のまち・塩釜市の地域特性を活かした事業。エネルギーをつくるだけでなく、使って頂くことが目的。それが地域活性化につながる」と話す。
そんな塩釜市のBDF事業を体験できるのが、「蒲鉾を揚げた油でバイオディーゼル燃料をつくろう!」ブースだ。体験するのは、BDFづくりだけではない。蒲鉾を揚げるところからはじめ、揚げ終った植物油を化学的に精製してBDFをつくり、完成したエネルギーを発電機で発電するまでを体験することができるというもの。すなわち、「エネルギーの地産地消」の一連の「プロセス」を体験できるというわけだ。揚げたての蒲鉾を頬張り、参加者らは「おいしかったです」「美味しいかまぼこ。その廃油利用。エコですね」と満足気な表情だった。完成したBDFをディーゼル発電機で発電すると、ほんのりと揚げ蒲鉾の香りが。参加者らは「排ガスが、良い香りでした」と驚いた様子だった。
「地域の特色を活かしていて素晴らしい」「これからの発展を期待できる」「将来性があると感じた。聞いてて面白かった」「実用化してるのがすごいと感じた」など、参加者からは将来性を期待する声が多くあげられた。一方「使い終わった油でいろいろ出来るとは知らなかった」「植物油で車が走るなんてすごい」と、BDFそのものを今回初めて知った参加者も多かった。
今後は、市民からの廃油回収も検討中だ。同組合部長の渡辺さんは「課題は、廃油の回収方法と品質管理。品質の定期的な点検や、市との協力により実現していきたい。地域活性化のため、今後もBDFの安定供給に努めたい」と話している。
出展者の声
1.出展ブースのコンセプトとねらい
塩釜市の練り製品生産量日本一という地域特性を活かし、大量に発生する使用済みの植物油を、環境にやさしいバイオ・ディーゼル燃料化する事業の取組内容について紹介しました。ねらいとしては、まず塩釜市は練り製品生産量が日本一であるということで揚げ蒲鉾を揚げて食べて頂くこと、そして使用済みの植物油からバイオ・ディーゼル燃料ができるまでを化学的に机上でつくり、説明しながら皆様に見て理解して頂くことを目的としました。
2.出展を終えての感想など
準備するのは、いろいろと大変でしたが、目的だった皆様方に食べて、見て、理解して頂いたことは、大変満足しております。また、他の出展者との様々な情報交換もでき、非常に有意義な一日でした。
3.natural science に対するご意見・要望など
今回のシンポジウムでは、様々なジャンルの方々の環境に対する取組みが親子さんたちに伝わったと思います。今後、第二回、第三回と継続して開催して頂き、環境の輪が広がっていくことを期待し、我々も微力ながら今後とも協力していきたいと考えております。ありがとうございました。