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平成19年度経済産業省「理科実験教室プロジェクト」
【授業タイトル】風力発電をしよう!(6年生)

文責:大塚 富美恵 (2008年12月 3日) カテゴリ:経済産業省「理科実験プロジェクト」(2007年度)(16)

【協力企業】有限会社 FIELD AND NETWORK

【授業のねらいと概要】

項目内容
授業のねらい

風の力を利用して電気を起こす方法を学び、自然のはたらきが人間にどのように役に立っているのかを知る。

授業の概要

単元「電流のはたらき」の発展の授業として2時間連続で実施する。はじめに、自然のエネルギーについて、科学者・技術者と一緒に考える。そして、風の力を利用した発電機の工作を行い、屋外で発電の実験を行う。さらに、風と電気の関係を探るために、科学者・技術者それぞれの視点で実験を行い、定量化したデータで比較をする。

【特別講師にお願いしたいポイント】

項目内容
特別講師にお願いしたいポイント
(本授業内容の中で、企業が関わるからこそできる点、授業の際に必ず踏まえてもらいたい点)

宮城県では、科学者と技術者の視点(理学的アプローチ・工学的アプローチ)から、「実験室から実社会へ」のつながりのある授業を提案しています。

<理学的アプローチ>

科学者が関わる意味...
・自然のエネルギーがどのようにしてできているのかを、より深く理解できる。
・発電の実験の過程で、科学の本質的なアプローチから、改めて電磁石のしくみについて学べる。

● 「そもそも、風とは何か?」という科学者の視点(理学的アプローチ)を通して、風の力を測定する。

<工学的アプローチ>

技術者が関わる意味...
・自然のエネルギーを利用する技術を知ることができる。
・環境への影響が少ない発電方法を知ることができる。

●「どうやってエネルギーをとりだせばよいか?」という技術者の視点(工学的アプローチ)を通して、風力発電装置を工夫して作る。

【授業進行例】(45分×2) [13時間目]

時間授業の内容・流れ
○児童の活動 ★企業講師が実施 ☆教員が実施 ▼主な児童の反応
学習のねらい必要な教具・教材
/☆留意点
導入
(10分)

○講師の方と挨拶をする。

☆ 講師の方を紹介する。今までの授業の内容を振り返る。
「今日は、科学者の●●さんと技術者の○○さんと一緒に、『風力発電をしよう!』の授業をします。」
「これまでは、電磁石の実験をして、『電流のはたらき』について学んできましたね。今日は、風力発電の実験をして、電気エネルギーと環境について考えていきましょう。」
★ 自己紹介する。

○科学者と技術者の話を聞く。
"そもそもエネルギーってなんだろう?"

★ 科学者
「今日は、みんなとエネルギーについて考えていきたいと思います。地球にはどんなエネルギーがあるか知っていますか?」

「火・水・風があります。これらのエネルギーは、太陽のエネルギーをもとに作られています。火のエネルギー、つまり化石燃料は100万年もの長い年月をかけて作られます。これに対して、水や風のエネルギーは、水と空気が循環されることによって、短い期間で作られるエネルギーです。水や風は、無限のエネルギーなのですよ。」

★ 技術者
「ところで、人間は遙か昔から、動いている物、燃えているものからエネルギーを取り出そうとしてきました。現代では、自然のエネルギーはまず電気のエネルギーに変えられてから、動力として使われています。」

「自然のエネルギーを人間にとって便利なエネルギーである電気のエネルギーに変えましょう。風は、外に出ればすぐに得られるものですね。せっかく吹いているのだから、利用しないと勿体無いです。さっそく風力発電をしてみましょう。」

○ 今までの学習内容を振り返る。






○ 自然のエネルギーと、今まで学んできた電気エネルギーとの関係を知る。

展開1
(25分)

○実験"風力発電装置を作ろう!"

★ 技術者
「モータに電池をつけると軸が回転するのは、知っていますよね。モータは電気のエネルギーを、回転のエネルギーに変えています。これとは逆に、回転のエネルギーを電気のエネルギーに変えてみましょう。」
「プロペラの羽を作って、風の力でモータの軸を回しましょう。」

<実験の手順>
① ペットボトルの底を切り落とす。
② ペットボトルの円周の長さに糸を切る。
③ 糸の長さをはかり、6等分のところに印をつける。
④ 糸をペットボトルに巻き、糸の印と同じ箇所に印をつける。
⑤ 印から、ペットボトルの曲がっているところまで、直線を引く。
⑥ 直線を引いた箇所を切る。
⑦ 6枚の羽を1枚ずつ、同じ方向に斜め45度に根元まで曲げる。
⑧ ペットボトルをギアボックスにつける。
⑨ 扇風機で発電する。→外の風で発電する。

  

外に出て、発電しよう!(できたプロペラをもって、みんなで外にでる)

1時間目のまとめ

風のエネルギーは太陽のエネルギーが地表を暖めることから生まれています。
この吹いている風は、数日前に太陽が地球をあっためたエネルギーじゃないかな。

その自然のエネルギーで人間にとって便利なエネルギーである電気にかえました。
このプロペラは、エネルギー変換装置です。


一家に一台、風力発電機があったら、一家のすべてをまかなえるかな。

○ 電気エネルギーとモータの関係を理解する。

<使用するもの>
ペットボトル(1?)、糸、ギアボックス、油性ペン、はさみ、カッター、定規、アルコールランプ(カッターをあたためるのに使用)、送風機
☆火を使うので、けがをしないように注意する。

展開2
(10分)

○科学者の話を聞く。
"そもそも、風ってなんだろう?"

★ 科学者
「風のエネルギーは、太陽のエネルギーが地表を暖めることから生まれています。今吹いている風は、数日前に太陽が地球を暖めたエネルギーかもしれませんね。」
→風がどのようにして生まれるのかを説明する。

プロペラは、水平方向から吹いてくる風の力を鉛直方向の力に変換することで、モータの軸を回転させます。

自然の中では、いろんな方向から、いろいろな強さの風が吹いています。 この気まぐれは風から、いかに安定に力をとりだすか、まず風そのものが働く力を測定しましょう。

水平方向から吹いてくる風がもっている力を、計ってみましょう。

○技術者の話を聞く。
"どうやって、風のエネルギーをとりだそう?"

★ 技術者
「先ほどの実験では、自然のエネルギーで人間にとって便利な電気エネルギーに変えました。みんなが作ったプロペラは、エネルギー変換装置です。」

「一家に一台、風力発電機があったら、電気を風力発電だけで賄えるでしょうか?もっともっと工夫が必要ですね。」

○ 自然のエネルギーと電気エネルギーの関係を改めて考える。

展開3
(5分)

○科学者の話を聞く。
"風の力を定量化しよう!"

★ 科学者
「プロペラを作って発電をしましたが、プロペラの羽根の角度が何度のときに、発電量が一番多いでしょうか?この時間は、プロペラの羽の角度と発電量の関係を調べていきましょう。」

「プロペラの角度が何度のとき、発電量が最大になるのか、発電量を電圧ではかって、誰もが納得できる科学の言葉にしていきましょう。」

「プロペラの羽根は、水平方向の風の力を鉛直方向の力にかえています。」

○ 実験によって明らかにしたいことを明確にする。

展開4
(15分)

○科学者の実験
"風の角度を測定しよう!

~風の向きとプロペラの角度の関係~"
★ 科学者
「水平方向の風の力を鉛直方向の力に変える際、どの角度が最適なのか調べていきます。」

<実験の手順>
①プラスチックの板をバネばかりに取り付ける。
②板の角度を調節する。
③風をおくる。
④バネばかりの目盛をはかる。

○考察

★科学者
「プロペラの羽根が受ける力は、羽根の角度が35度のときに最大でした。」

○ 定量化によって、風の角度とプロペラの角度の関係を考える。

<使用するもの>
ばねばかり、プラスチックの板

展開5
(15分)

○技術者の実験
"発電機を工夫してみよう! ~プロペラの角度と電圧の関係~"

★ 技術者
「プロペラをどの角度にすれば最も電圧が大きくなるかを調べていきます。」

<実験の手順>
①プロペラの羽根の角度をかえる。
②風をおくる。
③電圧計の目盛をはかる。

  

○考察

★ 技術者
「プロペラの羽根の角度が60度のときに起電力が最大になりました。」

○ 定量化によって、プロペラの角度と電圧の関係を考える。

<使用するもの>
ギアボックス、プロペラ、モータ、電圧計、いもぐちクリップ、ドライバ

まとめ
(10分)

○科学者・技術者の実験の考察

★ 科学者
「水平方向からの風から受ける力が、最大になるプロペラの角度は45度になりました。この実験装置をつかえば、風の角度と力の関係を計ることができます。いろいろな強さで吹く風だけれども、力の大きさという測定方法で、定量化することができました。力という単位は、科学の言葉で、世界中のどこにいっても使われている単位です。」

→児童の意見を聞く。

○技術者の話を聞く。
"自然のエネルギーを利用したモノづくり"

★ 技術者
「ここで得られた実験データがあれば、日本中どこでもプロペラをつくるときに、60度で設計すれば、最大の発電用が得られるという事がわかりました。基礎的な実験をして、データを測定すれば、今度はそのデータをもとに設計することができます。このように技術も、ひとつひとつの実験の積み重ねでつくられていきます」

→科学者と技術者が意見を交換し合う。
科学者「風の力を計ると、プロペラの角度が、45度のときにプロペラがもっとも、効率よくまわるという結果がでたのですが、発電量でみると、60度がもっとも効率がよいみたいですね。」

技術者「実際の発電の場合は、プロペラがモータやギアボックスからうける抵抗がありますね。その影響をうけている可能性がありますね」

科学者「実際のプロペラは回転をするので、プロペラの後ろからも風の抵抗を受けます。この風の抵抗を考えると、プロペラの角度を水平方向から60度にして、羽根の後ろからの風の抵抗を減らすことが、プロペラの回転する力を高めているのかもしれません。」

→技術者の方のお話し

「今日は風の力を利用して発電しましたが、他にも自然のエネルギーを利用した発電方法があります。」
→水力発電、太陽光発電などの発電装置を製品や資料で紹介する。

○講師の方と挨拶をする。

☆「今日は、科学者と技術者の目で、風力発電の実験をしました。二人の視点から、発電について、いろいろなことが分かりましたね。エネルギーや環境についても勉強できました。」
▼「科学者の●●さん、技術者の○○さん、どうもありがとうございました。」

○ 定量化した2つの実験結果を比較する。

○ 風の角度と電圧の関係を考える。



○ 自然のエネルギーの利用する方法を知る。

プログラム実施の成果・感想(「風力発電をしよう!」の授業案)

 単元「電流のはたらき」においての理科実験として、本理科実験プログラムを開発した。
 人間は遙か昔から、動いている物、燃えているものからエネルギーを取り出そうとしてきた。たとえば風車や水車をつくって、風と水から動力を取り出して来た。火から動力を得られるようになった時、産業革命がおこった。本プログラムでは、人間の歴史的なモーチベーションをもとに、自然のエネルギーを電気のエネルギーにかえる実験をおこなう。エネルギーがその姿を変えていく中で、動力を取り出すことで、エネルギーという普遍的な概念を学ぶ理科実験プログラムを開発した。
 理科実験の教材として、プロペラの角度を変えられる実験器具を製作した。新たな視点で理科実験を行おうと思えば、実験器具も開発する必要がある。
 実教室の実施においては、プロペラの羽根の角度を変えたときに、どれだけの起電力がえられるのかを測定した。工作の教室において、風力発電機をつくろうというのは、多数見受けられるが、本理科実験教室においては、プロペラの羽根の角度という実験条件を制御し、起電力という測定値をグラフ化した。このように「どのような実験条件で、どのような測定結果が得られる」のかを明確に定義したことで、子どもたちの探求心が深まったと考えられる。
 もちろん、このように定量的な実験を行うには、はかってみたいというモーチベーションが重要である。そこで1時間目においては、ペットボトルを用いて、各自の子どもがプロペラの製作を行った。子どもたちも、ペットボトルのプロペラの角度を調節して、できるだけ発光LEDが明るくつくように工夫を重ねていた。ある子どもは、2本のペットボトルを重ね合わせることで、プロペラの羽根の枚数を変えて、風力発電を行っていた。このように、子どもたちが、自ら工夫して、製作することが最初の土台として重要な点であることを感じた。
 本教育プログラムの作成においては、電子機器のメーカーで長年、開発を行われてきた企業OBの方に、実験器具の製作に協力いただいた。ホームセンターで販売されている日用品を巧みに用いることで、プロペラの製作をおこなった。このようにプログラム開発の段階において、地域の企業OBの方々と協力できたことは、これからのプログラム開発において、模範的な例になると考えている。子どもたちにとっても、日用品をはさみときりで、加工することで、プロペラを製作するといった技術を実感する機会になった。今後、企業OBとの連携で、子どもたちが、実感できる実験器具の製作を行っていく予定である。



平成19年度経済産業省「理科実験教室プロジェクト」実施報告

※詳細につきましては、こちらをご覧ください

授業プログラムリスト



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