第1回 natural science シンポジウム(2008.07.13)
カフェ全体の演出に関する意図・方法について【宮崎 栄康】
命題(開催趣旨)
科学とは種々の事象を研究し認識する活動であり、「観察」や「発見」にこそ本質があります。体系的知識や論理構造などの難しいものばかりではありません。しかし、昨今、科学と言うと科学的なものの見方・考え方ではなく結果や成果が注目されがちです。
Cafe natural scienceでは宮城県内の企業や研究機関における様々な研究、製品、サービスをカフェブースに展示します。一般の方や子供たちが実際に見て、触って、五感で感じられるような場をつくることで、科学が身近にあることを感じ、科学の本質的な面白さに触れてほしいです。
背景(現状分析)
科学イベントへの企業出展となるとビジネスマッチングの場が多い。来場者は予備知識があり、場慣れしている方が多い。出展者は会社全体の活動よりも製品パネルに対する説明をする。
一方、今回のターゲットである一般の方(子供、主婦、学生等)は科学を難しく捉え、抵抗感がある。ふらっと見学しに来たのに、出展者側に怒涛のごとく説明をされると嫌悪感さえ覚える。出展者側としても、どこまで理解が可能なのか、興味があるのかが気になる。一方的な説明にならないように、来場者の理解度をさぐりながらになり、伝えたいことが100%は伝わらない。
◇出展者側:来場者との壁を無くし、活動を認識してもらい、本質的な感想意見を聞きたい!
◇来場者側:初対面の抵抗感がなく、気疲れすることなく、様々なブースを回ってみたい!
目指すべき演出
①科学は身近にたくさん存在する!「科学のプロセスを体感しよう」
科学は難しい、論理が複雑すぎるということで、一般の人(子供、主婦など)からは疎遠されがちである。そこで、 そもそもの原理を単純かつ明確にし、来場者が理解できる範囲の最小限の知識で構成する。その応用例として製品 やサービスを位置づけることで、身近な生活に「科学」が応用されていることが分かり、科学の難しいイメージを 払拭できる。
②子供でも分かりやすいものは大人でも面白い!「本質的なプログラムを作ろう」
科学とは様々な知識・知恵の集結であり、一言で表現することは難しい。しかし、科学のステップとして 段階的に捉え直し、中心的な原理、考え方をお客様と共有することで、事業や会社全体への理解が浸透し やすい。子供でも理解できるレベルまで単語に凝縮することは、大人にも、誰にでも通用する"本質的" な説明が可能になるということである。
③出展者と来場者のギャップをなくす!「会場イメージは大きな実験場」
出展者側の伝えたい部分と来場者側が知りたい、興味がある部分がスムーズに一致するよう、製品の説明 からではなく、必ず体験、実験を行ってもらう。そして、それが強制的な感じでなく、大人も子供も自然 に参加できるように会場MAP・各ブースを演出し、会場全体として「実験」の場だという雰囲気を作る。 そうすることで出展者側も来場者に自然に話掛けられる。
演出の方法
◇会場MAP演出について
①珈琲を中心にゆったりした空間 | ②休憩用のカフェテーブルは中央に | ③壁を無くし、心身ともに開放的 |
入場すると目の前に珈琲・洋菓子コーナー。自家焙煎の珈琲を1人1人にドリップします。珈琲を飲みながらリラックス。 | カフェテーブルを各ブースの間に配置することで、子連れのお客様でも、自分たちのペースで参加することが出来ます。 | 隣接するブースの内容も見えて、目移りが可能なので、お客様はブースに必要以上に留まることなく、安心して回れます。 |
④各ブースの特徴を最大限に | ⑤関連ブースによるコラボレーション | ⑥人の動線をコントロール |
測定や発電など、実際に外に出て実験するブースは、お客様が気軽に参加しやすいように出入り口の近くへ。 | 学会へ行こう!による学生の研究内容と、企業の製品・サービスなどの学問の実践が会場で比較しながら、同時に楽しめます。 | 食べ物に関するブースを分散させることで様々な分野のブースを楽しみながら、会場全体を回れるように自然と誘導します。 |
◇ブース展示演出について
①実験コーナーと展示コーナーの確立 | ②机に構えず、お客様との距離を近く | ③アイキャッチャーは子供目線に |
体験と生活への実用の2段構成をお客様に共通認識してもらうため、机を2台ずつ用意し、各ブースとも2段構成を共通にした。 | 今回はあえてブース側に椅子を準備せずに休憩スペースはお客様と共有し、コミュニケーションが図りやすいよう意識した。 | 子供も複雑な機器を触ってOK、体験の場です。各ブースを○○レンジャーとキャラクターに名前をつけて、親しみやすくした。 |
◇プログラム開発について
①プログラムを4つの基本型に分類 | ②因果関係をきっちり明示化 | ③"そもそも"の疑問を抽出 |
企業がそれぞれの特性に合った展示が出来るよう、演出方法を4つに分類。詳しくは後のページで紹介する。 | 原理は最小限に抑え、因果関係をはっきりさせることで、実験・体験において、試行錯誤の部分を共有していくことが出来る。 | そもそも○○って何だろうという根本的な疑問に対し議論を重ねていくことで、様々な質問に対し、統一した見解が持てる。 |
評価・感想
◇良い点
・企業の科学技術を活かした企画はとても楽しい(来場者、大人)
・間近で科学の不思議を見れて面白い(来場者、大人)
・子供たちが興味を持てる見せ方がとても良かった(来場者、大人)
・へぇ、こんなのがあるんだ。いろいろ体験できた。(来場者、子供)
・おいしかった。全部おもしろかった。(来場者、子供)
・自分の専門外の研究がよく分かりました。(来場者、学生)
・壁がないのは新しく、とても良いと思う。(出展者)
・様々な分野の企業の人たちと出会えてよかった。(出展者)
・どの年齢層の方でも楽しむことができたと思う。(スタッフ)
◇悪い点
・休憩場所(イス)がもう少しあれば良かった。(来場者、大人)
・もう少し詳しく説明を聞きたかった。(来場者、大人)
・企業がもう少し多くてもよいかも。(来場者、大人)
・たくさんのお客様を一度に相手にするのが難しい。(出展者)
反省・改善点
目標としていた演出はプログラム開発、MAP・ブース演出によりほぼ達成されたと思われる。しかし、見落としていた点や共通認識がまだまだ不足している点も多い。アンケート調査、企業・スタッフへのヒアリングを元に改善していく必要がある。その中でも1番の課題は、やはりプログラム開発にあるだろう。企業が本質的かつスムーズにブースを展開していけるよう、プログラム開発の軸となる4つの演出方法をしっかり定義し、企業の特徴に最適な演出を目指していく。そうすることで今後、様々な分野の企業が参加しやすい環境になり、イベント自体も発展することが出来るだろう。
今後の参加方法
・1,2時間程度、企業の活動についてのお話を聞かせていただきます。 | ||
・お話を参考に、企業の特徴を活かしたプログラム、演出を立案します。 | ||
・原案を元に、企業のこだわり・特徴が伝わるよう改善していきます。 | ||
・完成したプログラムはWEB上でご紹介させていただきます。 | ||
・地域の方々に、年1、2回程度、実施していければと考えております。 |