少数の働きアリによる行動解析とモデル化~トゲオオハリアリの行動解析~
計測自動制御学会 発表
2008年12月19日に東北学院大学多賀城キャンパスに手行われた、計測自動制御学会にて『少数の働きアリが示す行動解析とモデル化~トゲオオハリアリの行動解析~』について発表してきました。
1.はじめに
私たちの身の回りには様々な昆虫がいる。昆虫は自然環境に適応し、それぞれの生活体系を構築してきました。その昆虫の中に、「社会性昆虫」と呼ばれる昆虫がいる。
この「社会性昆虫」とは、複数の個体が集団でコロニー、つまり巣を形成し、コロニー維持のためにお互いで助け合っている昆虫のことをし、ハチやアリなどが挙げられる。
この社会性昆虫の注目すべき特徴について、例えばアリであれば、アリには女王アリと働きアリがいて一般的なイメージとして、女王が働きアリを支配している「中央集権社会」のイメージが強いが、実際はそうではなく、働きアリ同士の相互協力による「分散型社会」で成り立っている。また、アリは群れるので、1対大勢で情報を共有し合うイメージもあるが、実際は各個体間の局所的な情報交換で共有されていて、この2点がコロニーの秩序を形成している。
しかし、局所的なやり取りから、どのように秩序だった社会が形成されていくのかはわかっていない。
今までのアリの研究では、コロニー全体を見る研究が多くされてきたが、それに対して1つ1つの個体に着目した研究はあまり行われていない。 また、個体に着目し、個体数を増やしていくことで、より局所性の意味が見えてくるのではと考えられる。よって、本研究では、1つ1つの個体に着目する。
2.目的
生物の行動(アリの行動パターン)から特徴的なふるまいがあるのではないかと考えられる。よって、本研究では、行動を観察し、その振る舞いからアリ同士のやり取りの意味を探っていく。
3.実験手法
実際の実験の映像(12倍速)。アリは、フェロモンや触角をぶつけ合うことで、何らかの情報を交換していることで知られていますが、映像から接触後停止したり、急に動きだしたりなどの動きが見られる。
生物学でのアリの研究では、フェロモンなどの化学物質(ミクロレベル)での発見が主流となっている。 しかし、先ほどの画像からわかるとおり、行動レベルでもアリの特徴的な振る舞いが見いだせる。よって、本研究では、1~2匹の行動に着目し、特に速度などの時間的な振る舞いと、軌跡などの空間的ふるまいを観察していく。
実験方法になる。(方法は図に書いてある通りなので省略) トゲオオハリアリは、体調約1cmで、沖縄に生息するアリです。個体数は30~300程で、アリでは比較的少ない数でコロニーを構成する種類になっている。 今回画像処理に使用したソフトは、LabVIEWとVisionというソフトを使用した。
4.結果・考察_軌跡について
先ほどの通り、時間と空間の2点から見るということで、まずは空間に対する結果と考察の説明をする。
まずは、アリ1匹での4時間分の軌跡になる。左の映像が、実験映像で、右の図はその映像からアリの位置の座標を読み取り、点を打って、つないだ図になる。この右の図から、半球全体を歩いているということがわかる。
次に、2匹のアリを使った3時間分の実験結果になる。図はそれぞれアリの軌跡になっている。 先ほどの1匹の図に比べて、部分的に軌跡がないところが見受けられる。
しかし、2匹の軌跡を重ねてみると、半球全体を覆っていることがわかる。 また、まるで囲ってある部分には、軌跡の集中が見られた。
アリはお互いの触覚をぶつけ合うことで何らかの情報を交換していることから、2匹が接触しているところに点を打ってみた(右図)。先ほどの、軌跡の集中の図と見比べてみると、接触しているところと、円で囲った部分が一致しているのがわかる。
また、接触したところを時間毎に色分けしてみた。この図から、2匹が会う場所が不定であるのがわかる。また、時間経過毎に、接触回数が減っていっていることがわかる。
次に考察に入る。 先ほどの結果から、 ・2匹が会う場所が不定 ・時間経過毎に接触回数が減少する。 ということがわかり、また映像から、動いているアリが停止しているアリのところに短時間で戻ってくることが度々あった。
もし、アリが空間を自由に動き回ることを、ランダムウォークで置き換えると、2匹の出会うところが不定であることは考えられるが、接触回数の減少と停止しているアリのところに戻ってくることは考えにくい。 この3点が成り立つには、ランダムウォークとリズムを組み合わせることで説明がつくのではと考える。
4.結果・考察_速度について
次に、時間に対する結果と考察になる。
アリ1匹での1分毎の移動速度のグラフになる。横軸が時間で、縦軸が速度になる。 この図から、一定の速度で動いておらず、また中盤から速度が100pixel/min以下ところが定期的にみられることから、「動く」「休む」を繰り返し起きている。
次に、2匹の場合の1分毎の移動速度のグラフになる。先ほどと同じで、横軸が時間で、縦軸が移動速度となる。1匹同様、2匹とも速度の変動が起きている。また、黒丸で囲んであるところに注目すると、一方が動いている間、もう一方が休むというパターンが交替に起きている。
また、先ほどの結果を1匹ずつのグラフ見たとき、黒丸で囲んである部分に「動く」「休む」が交互に起きているのが2匹ともから見られた。
次に考察にはいる。先ほどの1匹と2匹での結果から、どの結果からも「動く」「休む」が交互に起きている部分が見られた。これは、アリ特有のリズムがあると考えられる。
2匹での実験結果を見たとき、活動度という点で見てみると、100分を境に高いところと低いところに分けられる。開始直後はアリにとって空間内は未知の空間のため、歩きまわる。歩き回ることによって、アリはフェロモンを出しながら歩くので、次第にフェロモンが空間内に充満してくることで、アリにとって認知の空間になり、活動度に変化が起きているのではと考えられる。
また、2匹の結果から「動く」「休む」を交互に繰り返していることは、行動リズムが関係していると考えられる。
5.まとめ
今までのことをまとめると、空間に関しては、接触位置が不定、接触回数が減少、停止しているアリのところに戻ってくるという3つのことは、ランダムウォークとリズムを組み合わせることで、説明できるのではと考えられる。 時間に関しては、アリ特有の行動リズムがあること。活動度に変化があること。2匹の行動の交替などが考えられる。
6.今後の予定
今後の予定について。 まず、行動リズムについて、周期性の検証を行う。そこから、2匹で実験を行った場合、リズムはそろれぞれのアリのリズムのままなのか、それとも同調して同位相になるのか、または逆位相になるのか、2匹の相互作用を検証していく。
また、ランダムウォークと行動リズムを組み合わせてシミュレーションを行い、実験結果と検証を行う。
以上で発表を終了する。
反省点
- ・質問の意図をよくわかっていなかった。
- ・結果、考察が積み重なっていなかった。
- ・それぞれの結果がどのように繋がっているか、その結果に対して今後どのような検証を行うかなどちゃんと考えていなかった。