夏休み体験講座「電子回路製作を体験しよう!」 報告書
「ものづくり講座」は、NPO法人natural scienceが開発・実施を行なっている、小中学生を対象とした科学実験工作講座です。本講座は、単に知識を暗記するのではなく、受講生が一つひとつの要素について実感を伴いながら理解し、自らの力で組み立てる過程を大切にしています。本講座は、受講生がものづくりに不可欠な知識や技能を積み上げ、段階的に高度な作品製作へ進んでいくことを意図した、全300時間以上の長期カリキュラムで構成されています。
natural scienceでは、「ものづくり講座」に興味をお持ちの方を対象に、「ものづくり講座」のカリキュラムの中から基礎的な題材をとりあげ、受講生が部品の役割の理解からそれを応用した作品製作までの流れを理解することを意図した、体験講座を用意しています。
例年、ものづくり講座では小学生を対象とした夏休み体験講座を実施しています。今年も電子回路を学ぶ上で最も基礎的な電子部品であるLEDを題材とした、夏休み体験講座「電子回路製作を体験しよう!」を開講しました。本講座は、7月22日~8月22日にかけて全4回(各回2時間×4日間)開講し、合計25名の小学生が受講しました。
夏休み体験講座の目的
本講座では、受講生が基礎的な電子部品の使い方、工具の正しい使い方を学ぶことで、電子回路の作り方を習得します。そして、習得した内容を元に簡単な作品を製作することで、電気が回路の中をどのように流れるのかについて、実感を伴いながら理解をすることを目的として実施しました。
目的達成までの4つのステップ
ステップ1:工具の正しい使い方をとはんだづけの正しい手順を学ぼう!(1日目)
長く安定した動作をする回路を作るためには、正しい工具の使い方と正しいはんだづけの手順を学ぶ必要があります。このステップでは、受講生がはんだごてやニッパ、ラジオペンチを用いた配線の方法を学び、きれいなはんだづけと配線ができるようになることを目標とします。
ステップ2:電子部品を配線してLED点灯回路をつくってみよう!(2日目)
スッテプ1で学んだ配線技術を活かして、LED点灯回路を製作します。このステップでは、受講生が部品同士を配線することで、回路を作れるようになることを目標とします。
ステップ3:LED点灯回路の仕組みを理解しよう!(3日目)
ステップ3では、受講生がLED点灯回路の仕組みについて理解することを目標とします。具体的には、抵抗器の役割やLEDと抵抗器をつなぐ順番、配線のパターンを変えたときに、LEDがどのように点灯するかを調べます。
ステップ4:LED点灯回路を応用した回路をつくってみよう!(4日目)
ステップ4では、LED点灯回路を発展させ、異なる色のLEDを同時に点灯させる回路を製作します。受講生が電気の通る道筋をしっかりと理解し、回路が製作できるようになることを目標とします。
1日目:はんだごてとニッパの正しい使い方と配線練習
1日目は工具の正しい使い方と正しいはんだづけの手順について学びました。まず、はんだごての使い方、はんだづけの方法を学び、きれいなはんだづけができるように練習を行いました。次に、ラジオペンチやニッパの使い方を学び、すずめっき線を用いた配線の練習と抵抗器やLEDの取り付け方の練習を行いました。受講生は何度も練習を行う中で、はんだづけや配線に慣れることができました。
2日目:電子部品の取り付け方を学び、LED点灯回路を製作する
2日目はLED点灯回路を製作しました。抵抗器とLED、電池スナップを正しく配線し、LEDを点灯させます。部品を正しい順序で配線し、それらをはんだづけすることでLEDが点灯します。2日目の段階で、受講生全員がLEDの点灯回路を作ることができました。
3日目:抵抗器の役割や電流の通り道を理解する
3日目はLED点灯回路の仕組みと部品の役割について学びました。具体的な内容は、「抵抗器がないとLEDはどうなるのか?」「抵抗値が大きくなるとLEDの明るさはどうなるか?」「配線が切れるとどうなるか?」についてです。抵抗器がないとLEDに電流が流れすぎてしまうため、LEDが壊れてしまいます。一方、抵抗器の抵抗値が大きくなると、LEDの明るさは暗くなります。配線が切れてしまうと、電流はLEDに流れません。このようなことを実際に作って調べることで、各部品の役割についての知識を覚えるのではなく、実感を伴いながら理解することができました。
4日目:複数のLED点灯回路を製作する
4日目はLED点灯回路を応用した回路を製作しました。受講生は、異なる色のLEDを並べて同時に点灯させる回路や、ビニル線を用いてはしご状にLEDを点灯させる回路を製作しました。最後に、製作した回路を木の板やペットボトルにとりつけ完成です。これまで学んだことがあやふやになっていると、回路を完成させることはできません。受講生は作品製作を通して理解ができていなかった部分を改善し、複数のLED点灯回路を完成させることができました。
まとめ
本講座は、基礎的な電子部品を用いた作品の製作を通して、受講生が各部品の役割を学び、電気が回路の中をどのように流れるかについて実感を伴いながら理解をすることを目的として開講しました。受講生は、本講座の内容を理解することで、それを応用した回路をつくることができました。
体験講座 第二弾の実施
今年度からの新たな取り組みとして、体験講座第二弾を実施しました。体験講座第二弾は、通常講座カリキュラム第一章の内容を5回の講座で習得するものです。前述の体験講座第一弾を受講した受講生を対象に、夏休み期間中の通常講座時間内に開講しました。体験講座第二弾では、配線技術の向上を重視しており、体験講座第一弾よりも難易度の高いビニル線を用いた配線を行います。配線技術を高めることで、より細かな回路製作が可能となり、作品製作の自由度が広がります。
体験講座第二弾は、ものづくり講座 通常講座と同じ時間・会場で実施し、10名が受講しました。体験講座第二弾は通常講座受講生と同じ教室で開講しているため、通常講座受講生が体験講座受講生へ自分の作っている作品を説明する様子が見られました。体験講座第二弾の受講生は、通常講座の受講生の製作している姿に刺激を受け、製作の意欲が向上していました。体験講座第二弾の受講生は、回路製作の技術と理解を深め、自分で回路を作る力を身につけるだけでなく、その先にどんなものが作れるようになるかを見通せたようです。