近年、飛躍的な情報技術の進展に伴い、知や技術のコモディティ化が急速に進み、単なる知識であれば誰もがアクセスして容易に取得できる時代になりました。さらには、各種センサやデバイス等が安価かつ大量に普及し、それらをつなぐWEBテクノロジーが成熟化したことで、現実世界のアナログデータがインターネットと接続されることで生みだされるデジタル世界(IoT:Internet of Things)において新たな価値創造が求められる時代へと進展してきています。これが意味することは、それを使いこなす能力とアイディアさえあれば、企業のみならず個人でもアイディアを具現化できる時代が到来したということであり、逆に言えば、単なる知識習得ではもはや競合優位性を有さず、知を活用して"何を創るか?"、つまり、新しい価値を創造する力が今後ますます問われる時代になるということです。 ところが、そのような新たな時代が到来しているにも関わらず、日本の教育は、未だに従来の知識習得型の教育システムから、なかなか脱却できずにいるのが現状です。そのため、せっかく理数分野に関して卓越した意欲や能力があったとしても、それを活かす教育体制が不十分であることが、国際競争力の観点からみても、科学技術創造立国を標榜する我が国を根底から揺るがす致命的な社会的リスクであると言えます。 natural scienceは、文部科学省の外郭団体である国立研究開発法人科学技術振興機構(略称JST)から、科学技術コミュニケーション推進事業「ネットワーク形成地域型」の平成25年度(3ヵ年事業)の採択を受け(提案機関:宮城県、運営機関:特定非営利活動法人 natural science)、人材育成事業の一環として、大学生の科学コミュニケーター育成及び小中高生対象の科学講座の開発を行ってきました。そんな中、今後の技術トレンドとなる汎用化されたオープンな最新テクノロジーを活用しながら、まずは学生自身がおもしろいと思う「アイディアを形に」する育成段階の必要性を痛感し、アイディアを具現化し社会と共有化する力の育成を重点的に実践してきました。その成果は「国際ナノ・マイクロアプリケーションコンテスト2015」世界1位入賞や書籍化といった形で現れつつあります。 そのような人材育成を行う中で我々が痛感したのは、これから本格的に到来する知のコモディティ時代に真に求められる人材を、小中高生の段階から各成長段階に応じて、既存の五教科教育に加えて育成する必要性です。そこで、「知や技術のコモディティ時代において、ラピッドプロトタイピング環境を駆使し、目的やアイディア、方法論を自ら見つけ、多様な価値観を持つ他者と議論を交わしながら自らのアイディアを形にできる、"圧倒的な基礎力と創造力"を有する、科学・技術イノベーション人材」を我々の育てたい人物像と位置づけ、JST事業の最終目標のひとつである科学講座の受益者負担による中高生への提供を、大学生・院生の育成によって得られた人材育成ノウハウをもとに、体系化・高付加価値化して「natural science科学・技術講座」として平成28年度より本格提供を開始いたしました。
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