万華鏡から見える世界(第9回「秋の教室」)
教育プログラム「万華鏡から見える世界」を奥新川で行われたnatural festivalで実施した際の報告です。 たくさんの親子が万華鏡をのぞいて、形の不思議を発見していました。秋のコラボ企画として、 万華鏡のげいじゅつかの佐藤元洋さんと仙台万華鏡美術館に技術提供をいただきました。
万華鏡ってなに?
万華鏡は1817年にスコットランドの科学者のブリュースターが光の研究を行う中で発明されたものです。鏡を何枚か合わせて筒をつくります。片側から入ってきた光が鏡によって反射され、もう一方からのぞくと図形がみえます。鏡を閉じて合わせた場合は、2次元いっぱいにパターンが広がります。
科学的にみると鏡にうつった像が映り込んでいくので「幾何学的に図形が2次元平面をどのように埋めるのか」という問題になります。
当日の陣営
万華鏡をつくろう!
企画① ナチュラル万華鏡つくろう
秋をぎゅっとつめこみましょう!
どんぐり、紅葉した葉、石など、なんでも万華鏡の世界に送りこんじゃいましょう。
塩ビミラーをつかった万華鏡のつくり方
1.アクリルカッターを使って鏡を2cm間隔で、45cm切る
2.2cm×45cmの短冊状の塩ビミラーを15cm間隔で切り、2cm×15cmの短冊状の鏡を3枚つくる
3.正三角形になるようにテープで鏡を張り合わせる
4.光の取りこみ口に自然の材料をいれる
5.もう片方の穴からのぞく
企画② いろいろな万華鏡を体験しよう
ちょっとかわった万華鏡として台形の形の鏡を3枚合わせたテーパード万華鏡の登場です。のぞくと中には正三角形でできた球がみえます。手のひらうぃ見たり、落ち葉をみたり、参加者のみなさんは、それぞれの見方をしていました。
万華鏡からみえる幾何学の世界
合わせを考えると、右の図Aのように実像からの光りが何回も無限に反射していきます(光の道筋をずらしています)。
実像から反射した光が目に入る様子を表したのが図Bです。鏡への入射角と反射角が等しいことから、実像を鏡に対して、対称にひっくり返したところに虚像がみえます。鏡にものが映っている状態です。
次に合わせ鏡の場合を考えると図Cのように2回の反射によって、2つの虚像ができます。2回目の虚像は鏡Bによる一回目の虚像の虚像になります。このように光の反射の回数と虚像の数が一致して、無限に反射していくので合わせ鏡ではさまれた空間は無限に広がっていきます。
そして、合わせ鏡が平行出ない場合は図Dです。鏡の角度が直角の場合は、高だか2回しか反射できないので、二つの虚像ができることになります。左まわりの反射と右まわりの反射の両方があるので、4個の像が写ります。少し詳しくいうと、90度は一周360度の約数なので、2回目の反射による像が左回り右回りとも一致していますが、合わせ鏡の角度が360度の約数ではない場合、右回りと左回りの2回目の虚像の位置が一致せず、覗き込む角度によって、どちら虚像が見えるかが変わります。
より角度を小さくすると反射の数が増えて、よりたくさんの胸像ができます。
最後に3枚の鏡を合わせた場合ですが、3角形で閉じられているので、光は無限に反射することができます。つまり3角形が2次元の平面に広がっていく様子が観察されます。この場合も原理的には、2枚の合わせ鏡と同じで、光の反射で虚像が出来ることで説明できます。
川底の万華鏡
鏡を使わなくても万華鏡はつくれます。アクリル板を使って、正三角形の3角柱をつくりました。中に水を入れて落ち葉や石をしずめ、上からのぞくと川底の万華鏡の世界が広がっていました。この川底の万華鏡はテレビ局の取材も受けました。
川の底の万華鏡の原理
光はどこを通るかによってその速さが変わります。空気中での光の速さと水中での光の速さはことなり、水中での光の速さは、空気中より約1.3倍遅くなります。
光がもつ性質として、ある点からある点まで走る時間を最小にするという性質があります。図Aをみると空気中のAからBまで、最小の時間で進みたいわけです。水中では光の速さは遅いので、できるだけ水中を進む距離を短くしたい、そこでBの真上から進めば、水中での距離がもっとも短くなります。しかし、そうすると空気中での距離が長くなってしまい、結果として時間がかかってしまいます。ここで最小の時間でAからBにいける経路を求めると、屈折する角度としてある決まった角度がえられます。
さて、水中からの入射角を大きくしていくと図Bのようにある角度で、光が水中からまったくでなくなります。この入射角以上の角度で水と空気の境目に入ってくる光はすべて反射されます。つまり、ある角度で入射していくる光に関しては、水面は鏡のように振る舞うのです。
この原理を利用したのが「川の底の万華鏡」です。アクリル板に水を入れることで、水から空気中に光がでていけない角度をつくり、水との境をかがみのように使います。鏡にように全ての角度の光を反射できるわけではないので、虚像はすこし暗いですが、写真のように6角形がきれいにみえました。
げいじゅつかの紹介
万華鏡から見える幾何学と光の世界、万華鏡から見える自然の癒しの世界。
今回、技術提供をしていただいた万華鏡作家さんのご紹介です。
佐藤 元洋 motohiro sato
1976年 宮城県仙台市に生まれる
2002年 東京ガラス研究個基礎科卒業
日本万華鏡対象公募展 今田富江賞受賞、国際万華鏡協会展に出典 スリーセンス万華鏡展 優秀賞受賞
仙台市生まれの万華鏡作家 佐藤元洋は秋保の自然の中で、自然のいやしをガラスと鏡で表現する。
吹きガラスを駆使して創作される、繊細で透明感あるボディ、その中に表現されている佐藤元洋の万華鏡の世界は、近年国内、世界で高く評価されている
作家の言葉
万華鏡はいやしを与えるもの。鏡の反射がつくる世界によっていやされる。水の流れ、空の流れをイメージし、自然の中で、自然から感じたことをガラスと鏡で表現する。自然のいやしと人工物のいやし、一見、異なるものを万華鏡の世界の中で重ね合わせる。
万華鏡の世界は合わせ鏡で閉じられたものだけではない。
最高の万華鏡は自然にある鏡。空がうつり雲が流れる湖面。