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【第3回実験報告】ボルボックスー判断のモデル生物

文責:田村 京子 (2008年1月22日) カテゴリ:複合刺激に対するボルボックスの応答(7)

今回はボルボックスの動きに関する論文を読みました。つたない英訳ですがたいへん興味深いものでしたので、みなさんに紹介したいと思います。


論文の紹介

A TEST OF POSSIBLE MECHANISMS FOR PHOTOTACTIC STEERING IN VOLVOX CATERI(CHLOROPHYCEAE)
Harold J. Hoops, Mark C. Brinhton, Scott M. Stickles, and Philip R. Clement
Department of Biology, State University of New York at Geneseo


We tested two competing models that could explain how differential flagellar activity leads to phototactic turning in spheroids of Volvox carteri f.weismannia (Powers) Iyenger. In one model, turning results from the flagella of anterior cells in the lighted and shadowed hemispheres beating at different frequencies. In a competing models, turning results from a change in beat direction these flagella. Both models successfully explain phototactic steering under constant illumination, but they make different predictions when colonies are exposed to abrupt changes in light intensity. If turning is due to a change in flagellar beat direction, a decreased rate of progression will accompany an increased rate of rotation vice versa. We used video-microscopy to observe the behavior of positively phototactic V. carteri spheroid exposed to 10 × step-up and step-down stimuli. After a step-up stimuli, spheroid slow their progression and rotation by equal amounts. No significant changes are reported in those parameters after the reciprocal step-down response. These observation are consistent with the variable flagella frequency model and inconsistant with the variable flagella direction models for phototactic turning. Switching the direction of light stimulus by 180° result in reorientation of positively photptactic spheroids. The kinetics of this reorientation did not precisely match the prediction of either models.
ボルボックスの走光性を説明するのに、2つものデルがある。繊毛の動きの違いによる2つのモデルを検証するために実験した。 1つのモデルでは、ボルボックスの光があたっている部分の細胞と影になっている部分の細胞で異なった頻度で繊毛が波打つことで方向転換する。もう一つのモデルでは、繊毛の波打つ方向を変えることによって方向転換する。 しかし、ボルボックスが光の強度の急激な変化にさらされたとき違う予測がされた。もし、繊毛が波打つ周期をコントロールすることによって回転するのならば、前進と循環の進度の両方が同じ方向で同じ大きさに変わるだろう。もし、繊毛の波打つ方向を変えることによって回転するのならば、それに伴って繊毛の運動の循環の進度も減少するだろう。 私たちは明確な走光性Vの行動を観察するためにビデオ顕微鏡を使用した。あるボルボックスは、10回の光の強度の上げ下げする刺激にさらされる実験をした。光の強度を上げた後、ボルボックスは同じ量で前進速度と繊毛の運動を遅くした。 光の強度を下げた後、これらの要因となる重要な変化は報告されなかった。これらの観察は走光性における回転するため、繊毛の動く周期を変えるモデルと一致し、繊毛の動く方向を変えるモデルと矛盾する。光の刺激があたる方向を180°変えると、正の走光性を持つボルボックスは向きを変える。方向転換の動力学はどのモデルの予測にも正確には合わない。


論文のまとめ

ボルボックスが光に対して方向転換をする方法の仮説には以下の二つがある。
 1:単位時間あたりの繊毛の回転数を変える
 2:繊毛の波打つ方向を変える

仮説1:単位時間あたりの繊毛の回転数を変える場合

例えば、ボートのオールを、片側だけたくさん漕ぐと曲がる

この場合、前進と回転の進度が同じ量で変わる。

仮説2:繊毛の波打つ方向を変える

オールをそれぞれ反対方向に漕ぐと曲がる

この場合、回転はするが前進の進度は減少する。

ボルボックスの繊毛は、光があたる部分の運動が不活発になる。陰になっている部分の繊毛の水をかく力が光があたっている部分と比べて大きくなり、進行方向が変わる。 また、ボルボックスの前進と回転の比率を調べる実験をした結果、比率は変わらなかった。仮説2の運動では、回転すると前進の進度が減少するためこれにあてはまらない。 よって、仮説1の方法で方向転換すると考えられる。すなわち、単位時間あたりの繊毛の回転数を変えて方向転換している。

作用と反作用の法則について 

スケートリンク上で手で壁を押すと、押した方向と反対の方向にすべっていく。
このように作用の力と反作用の力の関係は、同じ大きさで反対方向に一直線上ではたらく。他の物体に力を加えると、同じ大きさの力を他の物体から返されている。



今後の予定

この論文でボルボックスがどのように方向転換しているのかを知り、今までの実験で観察してきた不自然な動きをするボルボックスはどのようなメカニズムでそうになっているのか、繊毛の動きの面からも考えたい。



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