第12回体験型自然科学の教室「海の教室」
風をとらえる ヨットを「つくる」 n-1グランプリ
頬をなでる風、流れていく水。自然には数多くの見えない要素が存在し、それらは常に変化している。どうすればこの風をとらえ、誰よりも早くゴールに到達することができるだろう?あれこれと頭で考える前に、まずは「やってみよう」。手を動かし、つくってみよう、試してみよう。その試行錯誤が、君だけの答えを教えてくれるはずだから。
「やってみよう」さんによる、科学実験工作教室 in 体験型自然科学の教室。「ヨットをつくってみよう!」の第一声から元気良くはじまった。誰がつくったヨットが最も早くゴールできるかを競う「n-1グランプリ」のはじまりだ。
試行錯誤で最も重要なのは、原因分析ができること。その原因分析がしやすいよう、スタイロフォーム・透明フィルム・竹ひご・アルミ板と、できるだけシンプルな要素と因果関係でヨットをつくるよう配慮してある。
ヨットをつくる部品は全員共通だが、帆の向きや幅、センターボードやラダーボードの位置は、自分で決める。どのように決めるかで、ヨットの進み方は大きく変わる。
風向・風量も確認しながら、どうすれば早くゴールに到達できるか、戦略を練ろう。お父さん・お母さんも、子どもと一緒になって競う。
「南東の風だから、こっち向きに帆をつけてみよう」。戦略も様々。
「ヨーイ、スタート!!」で一斉にスタート。
「あ、沈没しちゃった・・・」、「ジグザグしていて、前に進まない!」。何が良かったのかな、何が悪かったのかな。試行錯誤し、次に活かして行こう。
「あっ、そうか!自分でスタート地点を決められるのか!」とある子どもが気づく。ゴールに近いところからスタートすれば有利というわけではない。風向・風速、水流とヨットの進行方向を考え、最も有利なスタート地点を考えよう。
思いっきり濡れちゃっても、へっちゃら。「おかあさんの、とってきたよ~」
「よし、作戦会議だ!風向きが南東だから、帆の向きとラダーの向きをこうして・・・」「お父さん、作戦はいいけど、試すなら自分のヨットで試してよ」
「転覆しないようにするには、どうすればいい?」「こっち側に、砂をのってけてみれば?」。自然の前では、誰も正しい答えを知らない。子どもの方がうまくいく場合も多いから不思議だ。同じ目標に向かって、フェアに戦う。そのとき親子は、対等なパートナーとなる。
レース毎に、一体どんなヨットが記録を更新するのか?皆、興味津々である。
どんどん記録が更新されていく。記録を更新したヨットは、皆の研究対象になるようだ。
大野かがくしゃの記録が破られる。残念ながら、上位5位から脱落。かがくしゃの威厳をかけ、次回リベンジなるか。
※風で倒れないヨットを作る(大野かがくしゃのページ)
今回、最も早くゴールを抜けたヨットをつくったのが、彼女。記録は0'40。後続の「やってみようさん」の記録を1秒上回る。
センターボードやラダーボードの位置をずらした跡が見受けられる。試行錯誤の末の優勝。
と思いきや、「0'19」という記録を叩き出し、トップの座に躍り出た者があらわれたと聞きつけ、駆けつけてみると・・・スタッフの宮崎であった。
試行錯誤の跡。「子ども相手でも、本気でぶつかります」
最後に、上位入賞者への表彰式が行われた。「やってみようさん」からの賞状授与。
おめでとう。「n-1グランプリ」は、これからもシーズン毎にテーマを変えて、シリーズ化していく予定だ。
ヨットセットを、おみやげとして持ち帰る子どもも数多く見られた。ぜひ、自宅でも試行錯誤してもらいたい。
本実験は風速・風向の測定に関して仙台測器社に、風力風向測定機器の技術連携をいただいております
風をとらえる ヨットを「つくる」 n-1グランプリ 大会概要
ヨットのレースは、スタートからゴールに到達するまでの速さで競います。スタート地点は下図のようにどこからでもスタート可能です。風速、風向、水流と自分のヨットの進行方向を考慮して最も有利なスタート地点を決めましょう!!
最もタイムの短い選手が優勝となります。
ルール
1.スタートからゴールまでのタイムを競う
2.タイムが最も短い選手が優勝
3.スタート位置は規定ライン上なら自由に決めてよい
4.アウトゾーンくぐると失格
5.ヨットが転覆したすると失格
入賞者
今回の大会で有鬚ない成績を収めた上位三名の選手の紹介を行います。各選手のタイム、そのときの風向・風速は以下の表のようになりました。
ここで各選手の記録を見ると、1位みやざき選手は2位のささき選手に約2倍のタイムの差をつけてゴールしています。では、この差を決した原因は何なのかを両選手のヨットから考察してみます。
ヨットの裏面(センターボード、ラダー)について
まず、両選手のセンターボード、ラダーの配置についてみてみます。以下の写真・図の通りセンターボードもラダー向き、位置共に大きな違いはありません。
ヨットの表面(帆)について
両選手の帆の向きを見ると1位みやざき選手は帆を風に対して垂直、すなわち風を最大限利用して速度を上げています。これに対しささき選手はヨットが転覆しないようにバランスを重視し帆をつけています。
レース中、みやざき選手のように風を最大限利用するように帆をつけた選手は他のも多くいましたが、ほとんどの選手のヨットは転覆ししまいました。しかし、みやざき選手は砂によるおもりを利用し転覆を防ぎ最大限風の力を利用した結果の勝利だと考えられます。
今回の大会結果を踏まえ
上記のように今回の大会により勝敗を決する要素として「おもり」の存在が明らかになりました。「風を利用しつついかに転覆しないか?」これが勝負の鍵になりそうです。よって、来年の「n-1グランプリ ヨットの部」のルールに考慮していきたいと思います。最後におもりの役割に関する考察を書きに示しておきます。