巣穴の物理
巣穴をつくる生き物たちは、どのような法則で巣穴をつくっているのだろうか? 砂浜で山をつくり、トンネルを掘ったとき、トンネルが崩れた覚えがないだろうか。蒲生干潟の砂地にある巣穴の形を調べた結果、巣穴をつくる生き物たちは、地球の重力を感知し、巣穴の形を認識しながら、巣穴を掘っていることが考えられた。
実験方法
準備するもの:粉末状の石膏1kg(画材店にて購入)、水700cc、バケツ、かき混ぜるための棒
1.バケツの中に350gの水を入れる
2.粉末状の石膏をゆっくり入れ、水が粉末に吸収されるまで、2分間まつ
3.棒でバケツの底からゆっくりかき混ぜる
4.水と粉末が混ざり合い、粘性で出てくるまでかき混ぜる
5.巣穴にペースト状の石膏を流し込む
6.約15分経過した時、巣穴の石膏が指で触って固くなっていたら、巣穴に形取られた石膏を掘り出す
巣穴の大きさに対して、特に石膏の粘性が重要なので、水の分量などを変えて素早く流し込めるように調節する
実験結果と考察
巣穴を形取った石膏をみると、砂がついている部分と砂が付いていない部分に分かれていることがわかった。水平方向に巣穴が伸びている部分において、ついている砂の密度が小さくなっている様子が観察された。さらに砂の密度を詳しく観察すると、巣穴をある平面できったとき、巣穴の曲率に比例して、砂の密度が小さくなっていることがわかった。
以上のことから、水平方向に穴を掘る際には、粘膜による裏打ちをして、上から砂が崩れないようにしているように思われる。つまり、この穴を掘った生き物(おそらくカニだと思われるが)は重力を感知し、掘る巣穴の曲率を認識しながら、粘膜による裏打ちをしていると考えられる。このように生物は、地球上の物理法則を知っているのである。
今後の予定として、他の生物の巣穴も観察し、巣穴の形態からその巣穴に住む生物の行動を考察していく。