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n-1グランプリ in autumn
秋の教室~気球~

文責:田村 友里恵 (2009年1月 9日) カテゴリ:n-1(8)

目次

1. はじめに

 気球作りに最初にかかわったのは、大学の授業だった。 その授業は、実験を通して生体を知るというコンセプトで、数人の先生が交代で教えるものだった。しかし、ある日の授業で「気球をつくりましょう」と言い出した先生がいた。正直、意味が分からなかった。 教室には、ゴミ袋、空き缶、針金、ニッパーなど、明らかに生体を知ろうとする気配が伺い知れない道具が並んでいた。しかも、気球を作り始めたものの、授業時間(約3時間)の半分以上の時間がたっても、飛ぶ気配は全くない。... ...。その後、試行錯誤を重ねた結果、気球が浮いた。その時、今まで苦笑いだった生徒の顔が笑顔になっていた。先生もホッとしていたに違いない。教室内だったため、あまり高くは飛ばせなかったが、それでも、飛んだということが新鮮で、嬉しかった。
高さに制限のない外で飛ばすことができたら、もっと楽しいのだろうと思った。しかし、授業の中では外で気球を飛ばすことはできなかった。気温や風のせいだった。
今回、自然の教室で気球を作ることになった。あの授業での失敗を活かして、どうにか外で飛ばすことができないだろうか。自分で作った気球が飛んだら誰でも楽しいはずだ。誰にでも作れる外で飛ぶ気球をつくることができたらいいと思った。

2. 気球に使う材料

 気球に使う材料は以下の5つである。気球の胴体部分にはゴミ袋を使用する。また、燃料を入れる部分は、針金・エナメル線・アルミ型を使い、接着にはセロハンテープを用いる。燃料はエタノールで、キムワイプに染み込ませて使う。図1は、おおまかな気球のイメージ図である。重さは()の中の通りで、針金・エナメル線の場合は長さ50cmのときのだいたいの重さである。

  • ・袋...45L(約13g), 70L(約30g), 90L(約40g)
  • ・針金 ...0.55mm(約1g), 0.9mm(約3g)
  • ・エナメル線...0.2mm(約0.2g), 0.5mm(約1.3g)
  • ・アルミ型...菊型一号アルミ(約0.5g)
  • ・セロハンテープ
  • ・キムワイプ
  • ・エタノール


3. 気球づくり

 外で飛ぶ気球を目標として作った初期のころの気球が図2の左の写真である。45Lでは、室内では飛ぶが、袋の上部がすぐに溶けてしまうため、2番目に大きい70Lの袋で気球を作成した。すると、70Lの気球は室内であっても飛ばず、しかもわずかだが、袋の上部が溶けてしまう。写真でも、溶けているのが分かる(赤丸で囲んだ部分)。このとき、飛ばなかった理由の1つとして考えられるのが、重さである。袋の重さも大きくなっているが、このとき袋の口の部分が炎で溶けないように、針金で固定している。
 袋の大きさが小さいほど、袋の上部が溶けて穴があきやすい。しかし、袋を大きくすると重さや、袋の中の空気が温まりにくくなり、飛ばなくなる。これらのことから気球が重くなるまたは、袋が大きいときには、暖める力も増やさなくてはいけないということがわかった。つまり、いまのところ、飛ばなくなったら熱源を増やせばいいことになる。
 ということで、熱源を1つから3つに増やしたのが図2の真ん中の写真である。針金で3つのアルミの型をまとめ、袋とその針金をセロハンテープで固定した。こうすることにより、袋が大きくなったり多少気球が重くても、飛ぶようになった。しかし、ここで問題ととなったのは、気球のバランスである。燃料入れと胴体を、2点でしかつないでないので、袋の口の部分が溶けやすくなる。たとえば、真ん中の写真の青丸で囲んだ部分のように、袋が内側にめくれ、そこから袋が燃えてしまうのだ。よって、燃料入れの針金を4本にして、4点で袋と燃料入れをつなぐことにした。そうすると、完全にではないが、袋がめくれて燃えることはなくなった。
 次に、袋の上部が燃える点を何とかしなければいけない。炎との距離を遠くすればよいということで、袋をつなぎ合わせて二段にすることにした。あまり大きくなるとまた熱源を増やさなくてはいけなくなりそうなので、最初は45Lの袋を2つ,セロハンテープでつないだ。これで、袋の上が溶ける心配はなくなった。炎と袋の上との距離が大きくなったので、袋の口と、炎の距離も遠くすることにした。炎を袋の内部に入れるのだ。炎が袋の内部にあれば、袋の口がめくれても、炎が燃えうつることはない。
 最後に、外で飛ばすことを考えた。外で飛ばすのが難しい、1番の問題は風である。風で袋が煽られると、へこんだ部分が炎の熱で溶けてしまうのだ。なので、へこむと熱で溶けてしまう部分に骨組のようなものを作り、固定してみることにした。あまり重いと飛ばなくなるので、太さ0.5mmのエナメル線を使用した。炎に近い3箇所にエナメル線をセロテープでくっつけ、骨組を作った。これで完成である。
 この完成した気球を外で飛ばしてみた。その時、風速は1m以下であった。一応ではあるが、外で気球が飛んだ。その時の様子が図2の右の写真である。


4. 完成した気球

 様々な気球を作り、失敗を改善していった結果、最終的に図3のような形の気球が出来上がった。写真は、実際に室内で気球を飛ばせたときの様子である。さて、ではなぜこのような形になったのか。

1. 胴体部分

 胴体は45Lの袋を2枚、セロハンテープでつなぎ合わせた。こうすることで、炎から袋の上部までの距離が大きくなるので袋の上部が溶ける心配がない。また、エナメル線(0.5mm)を付けたのは、外で飛ばした時に、風で袋が煽られて袋が溶けないように固定するためだ。

2. 燃料入れ

 燃料入れに使用したのは、太さ0.9mmの針金と、アルミ型3つである。アルミの型3つを針金で括り、それを袋に固定する。このとき、気球全体を安定させるために袋にくっつける部分(足)を4本にして、袋にセロハンテープで固定した。アルミの型が3つなのは、袋の中と外の温度差を大きくするためである。また、炎が袋の中にあるようした。これは、炎が袋の外にあると、袋の口の部分と炎の距離が近く、袋が溶ける原因となるためである。

 詳しい作り方は後に記す。


5. 当日

 当日、なかなか風が強かった。飛ぶ気がしなかった。しかし、やってみないことには始まらない。ということで、とりあえず教室が始まる前に一度、飛ばしてみることに。その時の様子が図4の左の写真である。飛んでいるのか浮かせているのかよくわからない。しかも、風がふくと、骨格であるはずのエナメル線までもが曲がってしまい、袋が内側に折れてしまう。......あぁ、袋が溶ける...、気球が燃える...。「あぁ...」としかいうことができない。とりあえず、火を消して気球を作り直すことに。次の気球を作る前に道具を取りに気球の元を離れた。
 帰ってくると、気球が燃えていた。「あぁ...」と、言うこともできなかった。袋が溶けていたので、もう使えないことは分かっていたが、なんだか切なかった。原因は、火を完全に消していないことであった。その時の様子が図4の右の写真である。燃えた気球で大野科学者が温まっていた。気球は燃えて役に立ったのだと、合理化をしつつ次の気球を作った。
 気球2号を作っている間にも、様々な形のブースター型の気球が作られ、飛んでいく。そして、なぜかゴミ袋を着た子供やお父さんが増えていく。暖かいのだろうか。図5はブースター型の気球が飛ぶ様子である。
 気球2号が完成。今度こそ、と思い期待を込めて飛ばす。が、溶ける。そして秋の教室が終わった。
 と思いきや、教室が終わった後に、大野科学者が作っていた気球を飛ばしていた。それは飛んでいた。どんどんと高度を上げ、さっきまですぐ目の前にあったとものとは思えないほどだった。自分が飛ばしたわけではないが、気球が飛ぶのを見るのはやはり楽しかった。


6. 反省

 1番の反省点は、やはり当日気球を飛ばすことができなかった事だ。ここで自分が反省すべき点は、気球1号の失敗を気球2号に活かさなかったことである。気球1号で袋が溶けてしまった原因は骨組としていたエナメル線が、風の強さに耐えられず、曲がってしまい、その結果炎で袋が溶けてしまうことだった。ならば、2号は骨組をエナメル線よりも強い針金で作るなどを試してみるべきだった。しかし、2号も、1号と同じように作ってしまった。また、飛ばす時に風の強さを考えていなかった。下記図は気球1号と2号のお墓である。


7.気球の作り方

気球の作り方はこちらをご覧ください


8. おわりに

 終わってみて思うのは、やはり気球作りは楽しいということだ。当日、子供はもちろん、大人(特にお父さん)も様々な形の気球を作っていた。自分が作った気球が飛んだときはもちろん、他の人が作った気球が飛ぶのを見ている時も一瞬、我を忘れてしまう。飛行機が飛んでいても驚かないが、ゴミ袋が飛ぶと驚き嬉しいという、一見不思議な感じがするが、自分で実際に作ってみるとは、こういうことなのだと思う。やってみなければ、その楽しさも難しさも分からない。
 最後に、気球作りの写真を見ながら、いろいろと振り返る。気球が飛んでしまうと大きさなどはあまり気にしないの。なので、改めて気球の写真を見ると、袋を2枚つなげた気球は自分と同じくらいの大きさがあったのだなぁ、としみじみと見てしまう。


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n-1グランプリ in autumn「気球を飛ばそう!」

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