琉球大チームとのディスカッション
2月末に琉球大農学部 亜熱帯動物学講座の辻教授とディスカッションを行った。 トゲオオハリアリに関する話と共に今後の研究の方針を話した。ここでは議論した内容・聞いた内容を箇条書きでまとめる。
トゲオオハリアリの巣
- ・50cm程度の深さ、掘れば掃除機で10分程度
- ・部屋は近くに3,4つ
- ・巣は2週間で移動してしまう
- ・一つ一つの巣に対して極端に大掛かりな巣作りはしない
- ・水を巣にかけると引っ越しをする
- ・雨の後は巣を移動することが多い
- ・トゲオオハリアリの巣は斜面にあり水没しない工夫がある
- ・他にも温度を極端に変化させることで蟻は引っ越しを始める
- ・引っ越した後の巣はリサイクルされ再び巣として使用される
- ・引越し後の巣は別荘のように扱われ3、4つの巣を転々としているという実験結果もある
実験環境について
- ・ライトを照らすと蟻はビビるが、慣れる
- ・琉球大の実験室では照明を12hごとに昼夜を切り替えている
- ・トゲオオハリアリの着色にはマニュキュア用の塗料がよい。ただし乾くまでの処置が必要
産卵や卵巣発達に関して
- ・ワーカーの卵巣発達は他のワーカーが発達したワーカーを攻撃することから観察する
- ・3hという区切りはあるが実際卵巣発達はリニアに増えていき、産卵を開始するまでには7日程かかる
- ・ワーカーが卵巣発達を行う種の蟻は他にも存在する。例えばアシナガアリ。しかしアシナガアリは女王がいなくなってから数週間しないとワーカーの卵巣発達は見られない
- ・この差は何か?辻さをの話ではトゲオオハリアリは移転が多い。ワーカーの寿命が短い(一般に2年なのに対し7ヶ月。ちなみにトゲオオハリアリ女王は440日)である。などからコロニー滅亡の危険性が高いというのが原因らしい
- ・卵巣に関して言えば他の蟻では2割のワーカーは卵巣をそもそも持たない種も存在する。この二割は兵隊蟻の場合が多い。コロニー皆が卵巣を持つと滅亡のリスクが減るが卵巣維持にコストがかかる、この取引で変わる。
ロイヤルコート
- ・女王蟻の回りを取り囲むワーカーのこと
- ・女王とワーカーは引力と斥力がある
- ・女王に近きすぎれば離れていくが、女王が動くとワーカーが取り囲む。でいて女王がグルグル大きく回るときはついてこない
- ・ロイヤルコートは行動ルールではないかと辻さんは言う
- ・出会い過ぎれば動くが適当な距離で止まる
- ・女王ワーカー関係とワーカーワーカー関係の二種
- ・ルールをつくり玉突きでワーカーを移動させることでロイヤルコートを形成すれば女王のパトロール効率は相当あがるのでは?
- ・今後はどのくらい他の蟻に会ったかどうかで次の行動を決定するという観点からシミュレーションを行っていきたい
- ・このように昆虫はロボットに近い
- ・役割をモジュール化しローカルな規則からグローバルな動きへ
蟻同士のコミュニケーションについて
- ・蟻はどうやって隣の蟻を認識しているのか?
- ・炭化水素の臭いや視覚は考えにくい
- ・炭化水素はべたべたしていて揮発しない
- ・例え揮発しても充満してしまう。
- ・視覚だとしたら巣内が暗いという点で違うだろう。
- ・逆に認識するのはどれだけの頻度で接触したかどうかで次の行動を決めていて、結果として他の蟻を認識しているのでは?
- ・つまり個体と個体の接触を元にした行動決定をしているのではないだろうか
その他
- ・トゲオオハリアリの違うコロニーを二ヶ月飼ったらケンカしなくなった
- ・コロニー認識は餌によるものなのか?
- ・蟻のカーストは餌の量?
- ・女王化する蟻は大量に餌を与えている?
- ・ミツバチのローヤルゼリーは糖分が大量に含まれていることによって女王候補がいっぱい餌を食べるようになるという