少数の働きアリが示す行動解析とモデル化 第二報~歩行速度と時系列解析を主として~
2009年3月13日 計測自動制御学会 東北支部 第 249 回研究集会での発表の内容と反省 をまとめる。
表紙
目次
はじめに
私たちの身の回りには、様々な昆虫がいる。それらの昆虫達は、自然環境に適応しさまざ まな生活体系を構築してきました。その昆虫の中に、社会性昆虫と呼ばれる虫たちがいる。
この社会性昆虫とは、アリやハチのことをいう。 特徴は、女王やワーカーなどがいて、複数個体でコロニー(巣)を形成します。完成したコ ロニーの中では、女王がいるから支配的というイメージがあるが、実際は局所的な情報交換 による個体間の相互協力によって、コロニーの秩序が成り立っている。
しかし、その局所的な情報交換からどのように秩序だった社会が形成されていくのかはま だ分かっていない。今までのアリ研究では、コロニー全体に着目した研究が多くされてきた が、少数から徐々に個体数を増やしていく方法のほうが、より局所性が見えるのではないか と考えられる。よって、本研究では、少数の働きアリを使って研究していく。
目的
前回の発表では、アリの行動から、軌跡と速度のそれぞれの結果を考察しできた。 その結果、アリは特有のリズムを持っているということがわかった。 今回は、そのアリ特有のリズムの周期性の検証と、時間的な振る舞いと空間的な振る舞いの 関係性について、考察していく。
実験手法
実際の実験の映像(12倍速)。アリは、フェロモンや触角をぶつけ合うことで、何らかの 情報を交換していることで知られていますが、映像から接触後停止したり、急に動きだした りなどの動きが見られる。生物学でのアリの研究では、フェロモンなどの化学物質(ミクロ レベル)での発見が主流となっている。しかし、先ほどの画像からわかるとおり、行動レベ ルでもアリの特徴的な振る舞いが見いだせる。よって、本研究では、1~2匹の行動に着目 し、特に速度などの時間的な振る舞いと、軌跡などの空間的ふるまいを観察していく。
実験方法になる。(方法は図に書いてある通りなので省略) トゲオオハリアリは、体調約1cmで、沖縄に生息するアリです。個体数は30~300程で、アリで は比較的少ない数でコロニーを構成する種類になっている。 今回画像処理に使用したソフトは、LabVIEWとVisionというソフトを使用した。
時間軸に関する結果
まず、前回の結果を踏まえ、時間軸と空間軸のそれぞれの結果を見ていく。まずは時間軸 に関する結果を説明する。
図は、アリ2匹で1分毎の移動速度のグラフになる。赤がアリA、青がアリBとなる。ぞれぞ れのグラフから、速度の変動が起きていることがわかる。また、約100分以降を見てみると、 「動く」「休む」が交互に起きていることがわかる。
先ほどの速度グラフから、より0pixel/minに近いところを休んでいると言ったが、よく見 ると100pixel/min以下で微妙に速度が出ている。このことから「活動度」という点で、より 分かりやすくする。アリAは100pixel/min以上を、アリBは150pixel/min以上をアクティブと し、それ以下はインアクティブと分け、二値化した。
このグラフから、アリのリズムの周期性が見られるかを調べるため、「活動」「休止」の 変化が見られた100分以降に注目し、フーリエ変換を行った。
図が、アリAとアリBそれぞれのフーリエ変換の結果になる。2匹とも15分のところにピー クが立った。
次にアリ1匹も同様に、100分以降の活動度の2二値化をした。アリ1匹の場合は、28分の ところにピークが見られた。
時間軸に関する考察
アリ1匹、2匹の場合のそれぞれの結果からピークが現れたことから、アリは「活動」「休 止」のリズムを持っていると考えられる。
スタート直後アリは活発に動き回るということを探索していると考える。アリにとって実 験空間が未知の空間のため、探索する。実験空間を探索し終えると、リズムが起きると仮定 すると、100分で探索完了しているのではと考えられる。
空間軸に関する結果
次に、空間軸に関する結果になる。
図はアリ1匹の実験の様子と、その実験から抽出した軌跡の結果になる。 この図から軌跡は半球全体を覆っていることがわかる。
次に2匹で実験を行った際の結果になる。赤(左図)がアリA、青(右図)がアリBとなる 。それおぞれを見ると、部分的に軌跡が偏っているところとないところが見受けられる。
しかし、2匹の軌跡を重ねてみると、半球全体を覆っていることがわかる。 また、丸で囲ってある部分には、2匹とも軌跡の集中が見受けられた。
先ほどのアリの軌跡を探索度という点で見ていく。軌跡の図をアリ1個体分(6×6pixel )のメッシュに区切り、そのメッシュの中に1つでも軌跡があれば探索終了とし、0-240分の 間の探索度を見ていく。特に、開始からリズムが発生するまでの活動度に注目する。
左からアリ1匹、アリ2匹での実験のアリA、アリBの開始から100分までの図になる。 アリ1匹の場合、部分的に探索が終了していないのがわかる。 それに対し、アリ2匹で実験した場合のほうは、アリ1匹よりも探索がほぼ完了している。
次に、空間を完全に探索するのに、どれくらいの時間がかかったのかを見ていく。 まずはアリ1匹の場合を見る。左のグラフはx軸は時間、y軸は探索度数になる。探索度数は約 1000で探索が終了していることになる。右の図は0-240分の探索度の図になる。 右図からはほぼ探索が完了しているように見えるが、左図のグラフを見ると完全に探索が完 了していないことがわかる。
次にアリ2匹での場合の結果になる。 先ほど同様、左図が探索度の時系列、右図が0-240分の2匹の探索度を足し合わせた図になる 。時系列グラフをみると、約100分で1000に達していることから空間探索が完了していること と言える。
空間軸に関する考察
2匹の結果から、アリは探索が終わるまでは活発に動き、探索終了後、「活動」「休止」 のリズムが発生すると考えられる。 しかし、アリ1匹の場合、リズムが起きるまでの時間に探索が完了していないことから、完全 に探索が終わってからリズムが発生するのではなく、探索が完了した割合で「活動」「休止 」のリズムが発生すると考えられる。
また、探索度の時系列でアリ1匹とアリ2匹での活動度を見比べると、アリ1匹より2匹のほ うが、2分間の探索度が高い。このことから、2匹で探索することによって、活動が活性化さ れより短い時間で探索が完了するのではと考えられる。
まとめ
時間軸から、アリはそれぞれ「活動」「休止」のリズムを持っていることがわかった。 空間軸からは、空間を歩き回ることを探索しているとしたとき、2匹の場合はリズムが発生す る前に探索が完了している。また2匹で探索することで行動が活性化されると考えられる。
今後の予定
時間軸から、アリはそれぞれ「活動」「休止」のリズムを持っていることがわかった。
空間軸からは、空間を歩き回ることを探索しているとしたとき、2匹の場合はリズムが発生す
る前に探索が完了している。また2匹で探索することで行動が活性化されると考えられる。
この2つから、アリは、空間内の探索が終わるまでは活発に動き回り、大方探索が完了した
後、「活動」「休止」のリズムで行動すると考えられる。
質問
・速度の計算について、半球を使っているということで、カーブの部分の計算はどうして
いるのか。
今回は、抽出されたざ座標をそのままの状態で計算を行った。カーブの部分の実際の距離に
変換して、考察したいと考えているので、今後の予定にする。
・探索度のところで、2匹による活動度の変化とあったが、2匹で活発化する意味はどのよう
な意味があるのか?
アリは体表に複数の化学物質が混ざり合ったもの付いていて、それはコロニーによって化学
物質の割合が異なる。これにより、アリは仲間か、ほかのコロニーのアリかを見分ける。
2匹の場合、相手と接触することで、その体表の化学物質に触れることによって、活性化され
るのではと考えられる。
反省
pptを見て、何を話すか考えてしまっていたことから、全体的に筋ができていないと
思った。一つ一つ結果は出ているが、それぞれの関連性が説明できていない。結果が出た分
、詰めるだけ詰めるという形になってしまった。また、質問に対して理解するのに時間がか
かった。
これらを踏まえて、ちゃんと一から背景や目的、それに対して、結果から何がわかったのか
、それぞれどのような意味があるのかということを、逐一構築していく必要があると思った
。