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natural science 学会 若手研究者によるセミナー
「右と左の共進化:追いかけるヘビと逃げるカタツムリ」

文責:林 叔克 (2009年4月 8日) カテゴリ:TOPICS(72)セミナー(8)

巻き貝の巻き方向には右巻きと左巻きがある。これは種ごとに決まっていて,多くの種は右巻きである。少数派の左巻き種は,もともとは右巻きの種だったものが左巻きに進化したものと考えられる。右巻き種が左巻きに進化するためには,

  • 1.左巻き遺伝子を持った個体が突然変異で現れる。
  • 2.その個体が交尾して子孫を残すことで,左巻き遺伝子を持つ個体の割合が増えていく。
  • 3.すべての個体に左巻き遺伝子が行き渡る(=右巻き遺伝子を絶滅させて置き換わる)。

という3つの過程を経る必要がある。

カタツムリでは,巻きの逆転した個体は,ノーマルな個体と交尾することが難しくなる。そのため左巻きの個体は交尾相手に恵まれず,子孫を残すことができなくなると予想される。つまり,上記の2の段階より先には進めないはずである。それにもかかわらず,現実には左巻きへの進化は何度も繰り返し起きている。私はこの問題に対して,多数派の右巻きカタツムリに特化した天敵がいると左巻きへの進化が起きやすいという仮説("右利きの捕食者仮説")をたて,検証を進めてきた。わかったことは,

  • 1.カタツムリを食べるヘビの一群(セダカヘビ科)は,歯の数が左右で異なるという特殊な下あご形態をしていて,右巻きのカタツムリを食べるのに特化していること。
  • 2.左巻きのカタツムリは,セダカヘビに食べられにくいこと。
  • 3.セダカヘビのいる地域では,左巻きのカタツムリのグループが非常に多いこと。

の3点に要約される。これは,エサ生物と捕食者が追いかけっこのように進化を繰り返していく,共進化と呼ばれる現象である。本発表では,仮説を立ててそれを検証していくという研究の醍醐味,さらに広がっていく今後の展開のおもしろさを伝えられたらと思う。

natural science 学会セミナー 開催概要

日時2009年5月11日(月) 16:00~17:30
会場東北学院大学 泉キャンパス 4号館2F 化学実験室
対象高校生・大学生・研究者
問合特定非営利法人 natural science 学会運営事務局 info@natural-science.or.jp
協力東北学院大学教養学部


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