社会性の定義と血縁度
今回は社会性昆虫について調べ、学んだことについてまとめる
社会性とは何か?役割の分担などは社会性の性質であって定義ではない。 そもそも社会性を定義する際、ダーウィンの進化論から話が始まる。
ダーウィンの進化論の危機
ダーウィンの進化論とは、「すべての生物は自分の遺伝子を次世代に残す、利己的行動に基づいている」というものである。 この理論に従えば、より自分自身が他の個体よりも長生きし、子孫を残そうとするはずである。 しかし、この理論に明らかに反する行動を示す生物がいた。それが社会性昆虫である。 例えば、ミツバチは他の敵を毒針で攻撃すると、攻撃したミツバチは死んでしまう。複数の他のワーカーがいるにもかかわらず、「自ら死ぬことで仲間を助ける利他的行動」を行っていた。これはダーウィンの進化論の危機である。
血縁度
ある子どもがどれだけ他の個体を血縁的に近いのかを血縁度と定義する。 血縁度は稀な遺伝子が共通祖先から独立に伝わる経路をすべて考え、その確率の合計すればよい。 例えば図1(A)で「丸で囲った雌」から見た「姉妹」の血縁度は、稀な遺伝子を
- ・自分→雌(母)→姉妹の経路である1/2×1/2=1/4
- ・自分→雄(父)→姉妹の経路である1/2×1=1/2
上記2経路の合計で1/4+1/2=3/4となる。 しかし、「雄(父)」から見た「雌(娘)」は血縁度が1となる。これは半倍数生物のオスは配偶子形成時に減数分裂を行わない(図2(A))ためである。 これに対して雌雄2倍体性では「自分」と「兄弟姉妹」の血縁度は1/2となる(計算省略)。
例:雌雄2倍体性と半倍数性の場合について「自分」と「叔父や叔母」の血縁度を比較する。
雌雄2倍体性の場合
- ・自分→父→祖母→叔父または叔母の経路:1/2×1/2×1/2=1/8
- ・自分→父→祖父→叔父または叔母の経路:1/2×1/2×1/2=1/8
の二経路から、合計が1/8+1/8=1/4となる。
半倍数性の場合
- ・雌→雌(母)→雌(祖母)→雌(叔母)の経路:1/2×1/2×1/2=1/8
- ・雌→雌(母)→雄(祖父)→雌(叔母)の経路:1/2×1/2×1=1/4
の二経路から、合計が1/8+1/4=3/8となる。 すなわち、半倍数性の場合姉妹同士の血縁度が雌雄2倍体性のそれに比べて大きい。よって、自分自身が直接子ども残せなかったとしても、姉妹などが子孫を多く残すことで、結果として遺伝子が保存される確率が高くなる。社会性昆虫に見られる利他的行動は、集団の中の仲間を残すことで、結果として自分の遺伝子を残そうとする戦略だと考えることができる。