異なる媒質の境界における電磁波と電子波
【2-4】境界面において任意の形状の波に対して時間発展を与える一般表式
本節以降、 前々節と前節でそれぞれ導出した電磁波と電子波に対する透過係数と反射係数を用いて、平面波、パルスやビームなどの第1章で定義した様々な形状の波動に対する時間発展を計算します。その準備として本節では、任意の形状に対する一般表式を導出します。
波数ベクトルの重ね合わせにより任意の形状の波動を表現
【2-2】電磁波に対する透過係数と反射係数の導出と【2-3】電子波に対する透過係数と反射係数の導出では、 任意の波数ベクトルに対する入射波に対する反射波と透過波の振幅の比から、反射係数と透過係数を導出しました。 第1章では異なる波数ベクトルの波を重ね合わせることで、様々な形状の波動を作り出すことができることを示しましたが、異なる波数ベクトルをもつ入射波、反射波、透過波を重ね合わせることで、任意の形状の波に対する、境界面近傍での波の振る舞いを計算することができます。
これまでと同様、を境界面に取ります。 領域1と領域2の電磁波と電子波は一般的に次のように表すことができます。
電磁波の場合
ただし、はS偏光を表すかP偏光を表すのどちらかを表します。
電子波の場合
反射波と透過波はそれぞれ反射係数と透過係数を用いて表しています。 電磁波、電子波ともに同等の式で表現することができます。 式(1)と(2)の表式にて重要な点は、入射波の振幅を表すとは、に関して任意である点です。つまり、とを適切に設定することで、境界面の様々な形状の波の振る舞いを計算することができます。
電磁波と電子波の波数ベクトルの違いについて
式(1)と(2)の波数とを成分で表すと
となります。また、 透過角度と入射角度の関係も
と決まり、式(3),(4)は電磁波と電子波で違いはありません。 ちなみに式(4)式はスネルの法則と同等です。 電磁波と電子波の違いは、真空中の波数ベクトルと媒質中の波数ベクトルとの関係に現れます。 電磁波と電子波に対してそれぞれ、
となります。
空間分布の計算方法
ここまでで、境界面において任意の形状の波に対して時間発展をするために必要な情報は揃いました。 次節以降次のステップで計算します。
1.入射波の振幅、を与える。
2.式(5)より各媒質での波数ベクトルの大きさを計算する。
3.入射角度を与える。
4.式(4)で、透過角度計算する。
5.前々節と前節で与えられる反射係数、透過係数を計算する。
6.式(1),(2)を用いて、任意の位置と時刻におけるベクトルポテンシャル、波動関数を計算する。
【目次】シュレディンガー方程式とマクスウェル方程式
- 0.導入
【0-1】はじめに
【0-2】本稿で取り扱う基礎方程式 -
1.一様媒質中における一般解と具体例
【1-1】一般解の表式
【1-2】平面波の時間発展
【1-3】1軸ガウシアンによる光パルスと電子パルス (1軸ガウシアンによる電子パルスの拡散)
【1-4】2軸ガウシアンによる光パルスと電子パルス (2軸ガウシアンによる電子パルスの拡散, 2軸ガウシアンによる光パルスの拡散)
【1-5】3軸ガウシアンによる光パルスと電子パルス
【1-6】垂直1軸ガウシアンによる光ビームと電子ビーム
【1-7】垂直2軸ガウシアンによる光ビームと電子ビーム
【1-8】直線偏光と円偏光
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2.異なる媒質の境界における電磁波と電子波
【2-1】異なる媒質の境界における波動の一般論
【2-2】電磁波に対する透過係数と反射係数の導出
【2-3】電子波に対する透過係数と反射係数の導出
【2-4】境界面において任意の形状の波に対して時間発展を与える一般表式
【2-5】境界面における平面波電磁波の時間発展
【2-6】境界面における平面波電子波の時間発展
【2-7】境界面における1軸ガウシアンによる光パルスと電子パルスの時間発展
【2-8】境界面における2軸ガウシアンによる光パルスと電子パルスの時間発展
【2-9】境界面における3軸ガウシアンによる光パルスと電子パルスの時間発展
【2-10】境界面における垂直1軸ガウシアンによる光ビームと電子ビームの時間発展
【2-11】境界面における垂直2軸ガウシアンによる光ビームと電子ビームの時間発展
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3.転送行列法
・電子のトンネル確率
・光のトンネル効果
- 4.1層バリアにおける光パルスと電子パルスのシミュレーション
- 5・ポテンシャル障壁による量子粒子のトンネル時間
- 6・フォトニックバンドギャップによる光パルスのトンネル時間
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7.無限周期構造中の分散関係,群速度,位相速度
・転送行列とブロッホの定理
・ブロッホ波数と透過係数の関係
・分散関係
・透過係数と群速度の関係
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8.有限サイズの結晶における光パルスと電子パルスの横断時間
・光パルスと電子パルスの横断時間の導出
・パルス伝搬速度と群速度の関係
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9.フォトニックバンド端における光パルスの遅延
・1次元フォトニック結晶における透過係数と横断時間の数値計算
・横断時間の解析解
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10.バンド端における電子パルスの遅延
・1次元クローニッヒ・ペニーモデルにおける透過係数と横断時間の数値計算
・横断時間の解析解
- 11.非周期構造における光パルスと電子パルスと伝搬