【物理シミュレーションに挑戦!】古典力学
空気抵抗力シミュレーション1:空気抵抗力の定義
これまでに導出した計算アルゴリズムを用いて、様々な物理現象のシミュレーションを行っていくことを目的とします。
本シリーズでは日常生活でもお馴染みの空気抵抗力の起源について考えます。
・空気抵抗力シミュレーション1:空気抵抗力の定義
・空気抵抗力シミュレーション2:剛体球モデルによる粘性抵抗係数と慣性抵抗係数の見積もり
・空気抵抗力シミュレーション3:ファン・デル・ワールス力モデルによる粘性抵抗係数と慣性抵抗係数の見積もり
空気抵抗力は空気分子との衝突によって物体の速度方向と反対向きに生じる抵抗力です。空気抵抗力は速度が0のときには発生しないので、速度のべき乗で展開することが妥当です。速度をv(t)と表した場合、空気抵抗力は次のとおり表されます。
速度の1次と2次に比例する抵抗力はそれぞれ粘性抵抗力、慣性抵抗力と特別な名称が与えられていて、それぞれの大きさを表すパラメータは粘性抵抗係数 、慣性抵抗係数 が定義されます。
粘性抵抗係数と慣性抵抗係数
空気中を運動する剛体球に加わる力が空気抵抗力のみの場合、剛体球の運動方程式は
減速の効果は抵抗係数を質量で割った量で決まることがわかります。空気中を運動する剛体球に粘性抵抗力あるいは慣性抵抗力のみがそれぞれ加わっていると仮定すると剛体球の速度は解析的に求めることができ、次のとおりになります。
,
は初速度です。 粘性抵抗と慣性抵抗による減速は時間に対してそれぞれ指数関数とべき関数となります。 顕著な違いは を考えると、初速度に依存しない粘性抵抗に対して、慣性抵抗は係数にが掛かっているので、減速の効果が初速度に依存する点です。これは速度が大きいほどは初期減速効果が大きいことを意味ます。 下図は として、粘性抵抗力のみと慣性抵抗力のみの場合と、両抵抗力に対する数値解をルンゲ・クッタ法を用いて計算した結果です。速度が大きい領域では慣性抵抗力の寄与が大きく、速度が小さい領域では粘性抵抗力の寄与が大きくなります。
剛体球を用いた空気抵抗シミュレーション
本項では、剛体球の中を運動する剛体球の速度変化から、粘性抵抗係数と慣性抵抗係数を見積るためのシミュレーションを行います。 空気分子を模した質量1の空気分子を質量100の剛体球を初速度10で弾性衝突させながら運動させています。 シミュレーション結果からの粘性抵抗係数と慣性抵抗係数の見積もりは次項で行うことにします。