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太陽と月と地球の絶妙な関係

文責:遠藤 理平 (2018年4月 3日) カテゴリ:仮想物理実験室(325)

仙台市天文台のあるイベントに参加した際に、「月は地球よりも太陽から受ける力(万有引力)が大きいので、見方によっては月は地球の衛星とは言えない」ということを知りました。これまで月は地球の衛星と言われていたので、てっきり地球の影響の方が大きいものだと思いこんでいたので意外でした。つまり、月が地球のまわりを回っているのは特別な状況なのではないか考え、物理シミュレーションを用いて考察してみました。

基礎データ

太陽・地球・月の位置関係と大きさ

天体の大きさは天体間の距離に対してはほとんど点になってしまいます。また、有効桁数3桁では太陽-地球と太陽-月の距離に違いは無くなってしまいます。

質量

地球を基準した比
太陽1.99\times 10^{30}[\rm kg]3.33\times 10^{5}
地球5.97\times 10^{24}[\rm kg]1
7.35\times 10^{22}[\rm kg]1.24\times 10^{-2}

万有引力の公式

F=G\frac{m_1m_2}{r^2}

万有引力定数:G=6.67\times 10^{-11}[\rm Nm^2/kg^2]

万有引力の大きさ

太陽―地球3.52\times 10^{22}[\rm N]
地球―月1.98\times 10^{20}[\rm N]
太陽―月4.34\times 10^{20}[\rm N]

天体間の万有引力の大きさを比較してわかるとおり、月は地球と比較して太陽から2.19倍の力を受けていることがわかります。


数値計算パラメータ

以上の基礎データをもとに数値計算を行います。
初期位置は太陽・地球・月が一直線に並んでいるときとし、それぞれの初速度を次の通り与えます。
・太陽の初速度は0
・地球は太陽との万有引力のみを考慮して円運動する初速度
・月は太陽との万有引力のみを考慮して円運動する初速度+地球との万有引力のみを考慮して円運動する初速度

初速度

太陽0\, [\rm m/s]
地球2.97\times 10^{4}\, [\rm m/s]
3.07\times 10^{4}\, [\rm m/s]

シミュレーション結果


太陽と月と地球の万有引力シミュレーション1

上記の初速度で計算した結果です(天体の大きさは適宜拡大しています)。月は地球よりも太陽からの影響が大きいわけですが、同時に地球も太陽の周りを回っていることから月は地球の周りを回りながら太陽を回っていることがわかります。

月の初速度が小さい場合

次のシミュレーション結果は月の初速度がもとの92.8%の場合です。先の結果と似ていますが、月が地球を回る回数が減っていることがわかります。


太陽と月と地球の万有引力シミュレーション2

次のシミュレーション結果は月の初速度がもとの92.0%の場合です。月は地球の周りを回らず独立した惑星(?)となって運動します。


太陽と月と地球の万有引力シミュレーション3


まとめと自由研究課題

・月は初速度が特定の範囲の場合のみ、地球の衛星として振る舞う
・月の初速度がある特定の値より異なるほど衛星としての公転周期は長くなると考えられる
・月は地球と他の惑星が衝突した際に砕け散った残骸で生み出されたと考える場合(ジャイアント・インパクト説)、初速度がある特定の範囲に存在した残骸のみが月になりえると考えられる
・シミュレーションを用いて上記の条件の詳細を検証することが自由研究の課題として考えられる

参考

上記シミュレーションは「ルンゲ・クッタで行こう!~物理シミュレーションを基礎から学ぶ~」を用いて作成しています。



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