【量子力学再入門8】
箱型ポテンシャル障壁への波束の衝突
量子力学とは原子や電子といったナノスケールにおける粒子の運動を記述する物理学の一分野です。 メートルスケールで成り立つ「ニュートンの運動方程式」に対して、量子力学では「シュレディンガー方程式」と呼ばれる基礎方程式が成り立つと考えられています。本項では量子力学の基本的な問題を数値的に解くことで、量子力学の理解を深めることが目的とします。8回目のテーマは「箱型ポテンシャル障壁への衝突」です。
箱型ポテンシャル障壁とは
今回の箱型ポテンシャル障壁とはある区間だけポテンシャルが存在する系を表します。このような箱型ポテンシャル障壁が存在する系でもそれぞれの領域で存在しうる平面波の重ね合わせで波束の運動をシミュレーションすることができます。
箱型ポテンシャルの定義
各領域における波動関数
前々回に導出した転送行列、透過係数、反射係数を用いることで各領域の固有状態が得られます。一般の波動関数は固有状態の任意の重ね合わせで表現することができるため、これまでと同様、中心エネルギー10eVでガウス分布させることで、エネルギー的にも空間的にもガウス分布した波束をつくることができます。
分散関係
, , ,
シミュレーション結果
箱型ポテンシャル障壁に中心エネルギーE0 = 10.0 * eV の波束を衝突させた結果です。ポテンシャルの高さによって挙動が異なります。
V=5[eV]
V=10[eV]
V=12[eV]
V=15[eV]
計算パラメータ
空間スケール 1E-11[m];//横軸の値
時間スケール 1E-16[s];//1コマの時間
【メモ】ポテンシャルエネルギーが大きいと距離に応じて指数関数的に増大する解も存在するため、ポテンシャルの幅を狭くする必要がある。
→ 数学的には発散しないが有効桁の関係で広いと発散してしまう。
考察と次の課題
・中心エネルギーとポテンシャルエネルギーが同じ場合、ポテンシャル内に長時間に渡って波束の残骸が残っている。
→ 残有量の時間経過を調べると何か新しいことがわかるかも
・次は量子井戸内の波束の運動を調べてみます。
【メモ】これまでは固有状態が分かっている系なので、今度、任意の系で数値計算を行えるようにする。
プログラムソース(C++)
・http://www.natural-science.or.jp/files/physics/QuantumPhysics8.cpp
※VisualC++、GCC(MinGW)で動作確認しています。